利用者を守るための災害への備え
【備え1】災害を想定したイメージトレーニング
避難場所、経路は災害によって変わる。それぞれの災害を想定したイメージトレーニングが生死を分ける。
その時、せせらぎでは……
一度目の地震が起こったのは、利用者が就寝した21時26分。建物が激しく揺れ、壁の時計が落ちてガラスが割れる。屋内は危ないと判断した夜勤のスタッフ2人で、まず3人の利用者を真っ暗な野外に避難させたが、寒さと不安で建物に戻ろうとしてしまう。余震が続き、屋根瓦が落ちてきて、屋外も危険な状態。結局、建物の中で一番安全そうなデイルームに全員で移動し、救援を待つことにした。
イメージトレーニングのコツ
いくら既存のマニュアルを読み込んでも、すべてを覚えるのは現実的ではありません。また、マニュアル外のことが起きた時に対応できない恐れがあります。むしろ効果的なのは、様々な災害や状況を想定したイメージトレーニングなのです。
スタッフもマニュアル作りに参加する
マニュアル作りを行政や管理者へ任せきりにせず、スタッフ自身で考えながら作ってみると、事業所の置かれた状況を客観的に捉えることができ、マニュアル作りの過程そのものがイメージトレーニングになります。スタッフ全員でマニュアル作りをしてみましょう。
災害時の「想定外」を考えてみる
地震、火事、水害、土砂災害など、さまざまな災害について考えておくことが大切です。災害によって、避難所が異なるケースもあるからです。また、「避難経路が渋滞している時は?」「近所の川が氾濫したら?」など、できるだけ多くの「想定外」を想定してみましょう。
『レクリエ2018 11・12月』では命を守るために大切な「どこが安全か」を知ることについても案内しています。
看護師、介護支援専門員、介護福祉士、社会福祉主事、認知症ケア専門士(上級)。グループホームのほか、居宅介護支援事業所、訪問介護事業所、小規模型通所介護事業所などを運営。著書に『大地震から認知症高齢者を守れ!!』(ぱーそん書房)がある。
文/ナレッジリング(中澤仁美) イラスト/藤原ヒロコ