利用者を守るための災害への備え
熊本地震後のグループホームせせらぎの歩み
のどかな田園風景のなかにたたずむ「グループホームせせらぎ」。要介護度の高い認知症の利用者も多いこの施設の、地震直後から復興までの歩みを見ていきましょう。
2016年4月14日 地震発生
利用者が眠りに就き、スタッフが休憩しようとしていた14日21時26分に、震度6強の地震が発生。夜勤のスタッフは2名。利用者を抱え、急いで外に出ようとするが、瓦が落ちてきて危険などの理由で外での待機は断念した。しばらくして、区長や消防団、近所の人などに助けられながら、利用者と一緒に避難所へ移動。そのまま一夜を迎えることに。
4月15日~ 避難所で二度目の地震
15日にはいったんグループホームへ戻り片づけを開始したが、余震が続いたため再び避難所へ。16日1時25分、避難所内で本震に遭う。1つの布団に2人ずつ休み、スタッフが利用者を抱きしめながら横になっていた。また、避難所では地域の認知症患者も受け入れており、スタッフは介助やけが人の処置、大掃除なども担当した。
4月22日~ 被災した施設での生活
自宅が大規模半壊以上の人しか避難所に留まれないことになり、ライフラインの点検後にグループホームへ戻る(屋根瓦が落ちる、外壁が倒れるなどの被害あり)。スタッフが3人以上は常駐できるよう、1泊2日でローテーションを組んで動いた。
4月22日~ 介護・看護職の支援、ボランティアの支援
DCAT(災害派遣福祉支援チーム)や日本ホスピス・在宅ケア研究会など、介護職や看護職の支援部隊が到着。がれきの撤去や利用者の全身観察、身体介助などを担ってもらう。そのほかのボランティアスタッフについても、徐々に受け入れを始める。
2~4か月後 利用者の体調悪化
表面的には大きなショックを受けているように見えなかった利用者でも、体の緊張が著しい状態であることが判明。発災から3か月後に1人、4か月後にもう1人、循環器疾患を持つ利用者が衰弱して亡くなり、スタッフも精神的に大きなショックを受けた。
半年後 支援者やボランティアの離脱、スタッフの疲弊
現場の状況がだいぶ落ち着いてきたタイミングで、それまで定期的に訪れていた支援者やボランティアが一気に離脱していった。日常に近づいたという安堵感を得るとともに、蓄積した疲労感が表面化し、燃え尽き症候群のようになるスタッフも。
~現在 建物などの復旧
看護師、介護支援専門員、介護福祉士、社会福祉主事、認知症ケア専門士(上級)。グループホームのほか、居宅介護支援事業所、訪問介護事業所、小規模型通所介護事業所などを運営。著書に『大地震から認知症高齢者を守れ!!』(ぱーそん書房)がある。
文/ナレッジリング(中澤仁美)