利用者を守るための災害への備え
【備え5】利用者の体調はしばらく後で異変が現れることも
利用者の体調は、災害直後よりしばらく経ってから異変が現れることも
その時、せせらぎでは……
震災直後、認知症の利用者とスタッフは、デイルームで体に触れながら寄り添っていた。また、避難所ではスタッフは認知症の利用者を抱きしめながら1つの布団で添い寝をしていた。大きな混乱は見られなかったが、なかには揺れがひどくなると突然歌いだす利用者もいた。顔なじみのスタッフがいることで、基本的に利用者は安心しているように見えたが、地震から約2か月が経過したころから体の緊張や身体機能の低下、循環器疾患の症状の悪化などが認められた。
災害後の体調不良と予防法
利用者の体調不良は、災害直後よりも、数か月後に現れるケースが少なくありません。環境の変化そのものが大きなストレスになるのはもちろん、水分不足や栄養不足、運動量の低下、感染症の流行などが引き金となり、重大な疾患につながることもあるのです。
災害後に現れやすい心身の変化
・循環器疾患(脳卒中、心筋梗塞、静脈血栓塞栓症など)
・呼吸器疾患(肺炎など)
・消化器疾患(消化性潰瘍など)
・精神疾患(うつ、認知症の悪化など)
・老年疾患(生活不活発病、歩行障害など)
・その他の症状(浮腫、皮膚疾患、体重減少など)
体調不良を防ぐために行いたいこと
・積極的に水分摂取してもらう。
・できる限り良質で食べやすい食事を提供する。
・睡眠時の環境を整える。
・気温の高低差に配慮する。
・それまで行っていたリハビリをできるだけ継続する。
・慢性疾患を抱える利用者については、数日分の薬を持ち出し袋に入れておく。
・お薬手帳などの医療情報を医療者に提供できるようにしておく。
・散歩や体操、レクリエーションなどで体を動かし、ストレスを軽減する。
看護師、介護支援専門員、介護福祉士、社会福祉主事、認知症ケア専門士(上級)。グループホームのほか、居宅介護支援事業所、訪問介護事業所、小規模型通所介護事業所などを運営。著書に『大地震から認知症高齢者を守れ!!』(ぱーそん書房)がある。
文/ナレッジリング(中澤仁美) イラスト/藤原ヒロコ