虐待につながる「不適切ケア」
虐待につながる不適切ケア事例~コミニュケーション
“虐待の芽”ともいわれる「不適切ケア」。介護者が「つい」「とっさに」行ってしまいがちな、配慮が不足したケアのことです。そんな「不適切ケア」の事例から、自分たちのケアを振り返ってみましょう。
こんなことも不適切ケアに
同じことを何度も重ねて確認する
「トイレは済ませましたか?」「本当に行きましたか?」「大丈夫ですか?」など、心配だからと利用者に同じことを重ねて確認してしまうことがあります。何度も聞かれたら、利用者もうんざりしますし、尊厳を傷つけてしまうことになります。
名前を「ちゃん」づけで呼ぶ
「ちゃん」をつけて利用者の名前を呼んだり、なれなれしい態度で接したりすることは、相手を軽んじているように見られてしまいます。本人が希望する場合は、ほかの利用者がいない場所に限定するなどの配慮が必要です。
ドアに鍵をかける
介護者の都合でドアに鍵をかけることは身体拘束に当たります。また、離床センサーマットは「監視されている」と感じる利用者もいます。本人がどう受け止めるかを考えたうえで、アセスメント(離床頻度や時間帯の把握)に活用するなど目的を持ち、時間を制限して利用しましょう。
「動かないで!」と命令口調で声かけ
「動かないで!」「座っていて!」といった声かけは、利用者の行動制限に当たります。こうした言葉による拘束を「スピーチロック」といいます。利用者の意に沿わない行動の制限は行うべきではありません。言われた人の気持ちを推し量ることが大切です。
上川病院総師長在職中から「縛らない看護」に取り組む。以来、拘束廃止、虐待予防に携わり続け、「抑制廃止福岡宣言」(1998年)、「九州宣言」(1999年)のきっかけをつくる。2009年より現職。拘束廃止研究所所長。NPO法人シルバー総合研究所理事。
文/高野千春 イラスト/尾代ゆうこ