虐待につながる「不適切ケア」
【不適切事例4】車いすで職員の側にいてもらっています
Dさんは自立歩行が可能ですが、家族から転倒させないよう言われているので、車いすで常に職員の側にいてもらうようにしています。
このケアの何が問題なのでしょう?
【ここに注意!】常時、車いすに乗せて連れ歩くことは、その人の自由を奪うことになり、身体拘束に当たります。
家族の意向もあり、安全を第一に行っていたとしても、歩ける人を車いすに座らせ、身動きをとらせないようにすることは、身体拘束に当たります。身体拘束は、肉体的につらいだけでなく、精神的な苦痛を伴います。Dさんは、人間としての尊厳を損なわれるだけでなく、このケアがつらい体験として心に残ってしまいます。また、安易に車いすを使うと体の機能低下を招く恐れがあります。
利用者の自由や権利を奪うようなケアは行わないのが大原則。家族に対してはきちんと説明したうえで、安全に歩ける環境を整えましょう。
監修/ケアホーム西大井こうほうえん施設長 田中とも江
上川病院総師長在職中から「縛らない看護」に取り組む。以来、拘束廃止、虐待予防に携わり続け、「抑制廃止福岡宣言」(1998年)、「九州宣言」(1999年)のきっかけをつくる。2009年より現職。拘束廃止研究所所長。NPO法人シルバー総合研究所理事。
文/高野千春 イラスト/尾代ゆうこ
上川病院総師長在職中から「縛らない看護」に取り組む。以来、拘束廃止、虐待予防に携わり続け、「抑制廃止福岡宣言」(1998年)、「九州宣言」(1999年)のきっかけをつくる。2009年より現職。拘束廃止研究所所長。NPO法人シルバー総合研究所理事。
文/高野千春 イラスト/尾代ゆうこ