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介護現場のリスクマネジメント

「ヒヤリ・ハット報告書」はなぜ必要か~その[1]

「ヒヤリ・ハット報告書」はなぜ必要か~その[1]

■「気づき」が多い人ほど「ヒヤリ・ハット」が多い
介護現場の事故を未然に防ぐには、十分な「見守り」が必要とされます。しかし、実際には1人のスタッフが複数の利用者を見守る場面もあり、注意が行き届かないことが少なくありません。

スタッフ全員が同じレベルでそれぞれの利用者を見守り、安全を確保するためには、場面ごとの注意点を明確にすることが重要です。

この時、役立つのがスタッフが体験した「ヒヤリ・ハット」です。ヒヤリ・ハットとはご存じの通り、事故には至らなかったものの、ヒヤリ、またはハッとしたエピソードのことです。

介護職員の研修会では、しばしば「ヒヤリ・ハットを防ぐ方法は?」との質問が挙がります。しかしこうした質問自体が、ヒヤリ・ハットのとらえ方を間違えているのです。ヒヤリ・ハットは事故ではないので、そもそも防ぐ必要はありません。むしろ、たくさん発見したほうが、事故につながる危険を見極めることができるといえます。

つまり、観察力が鋭く、気づきが多い人ほどヒヤリ・ハットが多くなります。多くの施設がスタッフに提出を求めるヒヤリ・ハット報告書は、言い換えれば「気づきレポート」なのです。

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■個々のヒヤリ・ハットに原因や対策を求めない
ヒヤリ・ハットは「気づく力」によって見つけられるものですが、どのレベルで「ヒヤリ」とするかは一人ひとり異なり、基準はありません。ですから、スタッフは自分が気づいたことをどんどん書き出していけばよいのです。

そして、それぞれのスタッフが出したヒヤリ・ハットをできるだけ大量に集めて分析することで、はじめて問題点が洗い出されます。同じ時間帯に同じような事例がたくさんあるなら、対策が必要です。

もしかしたら、教育やマニュアルの見直しが必要かもしれません。似たようなヒヤリ・ハットがたくさん出てくる、同じようなヒヤリ・ハットがなくならない、といった場合は、そこに危険が潜んでいる可能性があります。

ヒヤリ・ハットの分析は統計学に基づいているので、母数となるデータの数が多くなければ成り立ちません。同じようなヒヤリ・ハット300件が1件の重大な事故を暗示していることもあるのです。

ヒヤリ・ハットと事故報告書の違いも理解しておきましょう。どちらもリスクマネジメントのツールではありますが、ヒヤリ・ハットは、事故報告書と違って一件ずつその原因や対策を考察する必要はありません。

あくまでもヒヤリ・ハットは危険をあぶり出すためのツールだということを忘れないでください。

泉 泰子
損保ジャパン日本興亜リスクマネジメント株式会社医療リスクマネジメント事業部上席コンサルタント。看護業務に従事した後、現職。全国の医療機関や介護福祉施設向けのリスクマネジメント体制構築支援業務を行っている。
文/蜂須賀裕子 
イラスト/saki、村山宇希
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レクリエ 2014 3・4月号

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80~81ページに掲載ページに掲載

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