うまくいかないのはなぜ?
利用者家族からの入浴に関するクレーム対応【前編】
Q 入浴を嫌がる利用者になんとかシャワーを浴びてもらったら、「お風呂に入れてくれないと言っている」と家族からクレームが。どう対処したらいいでしょう?
デイサービスで入浴を嫌がるAさん。説得してシャワーを浴びてもらいましたが、洗髪はできませんでした。帰宅後、家族から「どうして入浴させないのか」と連絡があり、困っています。
A 家族には、本人の言葉以外に施設での様子を知る手立てがありません。ネガティブなことも含め、実情を伝えるようにしていきましょう。
Aさんの言葉に加え、洗髪ができず頭がにおっていたことから、家族は入浴していないと判断してしまったのかもしれません。利用者の施設での様子をありのまま家族に伝えるようにしていくと、介護者への対応に理解が得られやすくなります。
【対応のポイント】
認知症の人は負の感情が残りやすいため、施設で過ごした時間の9割が楽しいことであっても、残りの1割の嫌だったことや不安だったことのほうが心に残り、それを家族に話してしまいます。「お風呂に入っていない」「だれもかまってくれない」と訴えられれば、家族が信じてしまうのは仕方のないこと。しかし、それがクレームになって返ってくると、頑張っているスタッフは不満を感じたり、驚いたりするかもしれません。
施設で過ごす時間には、利用者にとってよいこともあれば、よくないこともあります。介護者は家族を安心させようと、つい、よいことばかりを伝えがちですが、「つまらなそうにしていた」などネガティブなことも伝え、その時、施設側はどのように対応したかを知らせるようにしましょう。日頃からそうすることで、家族は施設での実際の様子がイメージしやすくなり、介護者のケアに安心感を持てるようになります。
本誌では認知症ケアでの「家族との関係」について事例別に対応のポイントをご紹介しています。
東京都健康長寿医療センター研究所研究員、看護師、保健師。介護施設や在宅での認知症ケアを研究。著書に『認知症の方の想いを探る~認知症症状を関係性から読み解く~』など。
文/高野千春 イラスト/田上千晶