うまくいかないのはなぜ?
使用済みティッシュをしまう認知症利用者への対応【前編】
Q 利用者が使用済みのティッシュをタンスの引き出しにしまい込んでいます。不衛生なので破棄すると「盗られた」と騒ぎます。どうしたらよいでしょう?
Bさんは、口を拭いたり、鼻水をかんだりしたティッシュペーパーを、自室のタンスの引き出しの中にため込んでいます。衛生面を考えると捨ててしまいたいのですが、なくなると「盗られた」と言って騒ぐため、手を出すことができません。
A 物を集めるのはこだわりや不安があるから。捨てることばかりではなく、うまく手元に置いておけるように考えるのも対応の1つです。
収集癖のある人は、集めている物にこだわりがあったり、人に見られたくなくて隠したりしていると考えられます。本人にとっては「大事な物」であることを理解し、衛生面を考慮しながら、手元に置いておける方法を考えてみてもいいでしょう。
対応のポイント
なぜその「物」にこだわるか、集めている本人もうまく答えられないことは少なくありません。大切なのは、それがその人にとって大事な物で、なくてはならない、あるいは人に見られたくないと感じていることです。そのこだわりの背景には不安があります。「大事な物をそばに置くことで安心したい」「以前に捨てられた(盗られた)から隠したい」「恥ずかしいから見られたくない」と、不安から自身を守っているのかもしれないのです。
物を集める行為に気づいた際には、決してとがめたり、回収したりせず、集めても支障のない物であれば、しばらく様子を見て理由を探りましょう。危険があったり、衛生面で問題があったりする物については、「交換する」をキーワードにします。例えば、使用済みのオムツを丸めてため込んでいたら、代わりに未使用のオムツを丸めて差し替えます。使用済みティッシュの場合も同様です。
『レクリエ2018 11・12月』ではこの時の利用者と介護者の気持ちについて深く掘り下げています。
東京都健康長寿医療センター研究所研究員、看護師、保健師。介護施設や在宅での認知症ケアを研究。著書に『認知症の方の想いを探る~認知症症状を関係性から読み解く~』など。
文/高野千春 イラスト/田上千晶