介護保険改正で現場は?
介護保険制度改正の5つのポイント【後編】
3 共生型サービスの創設
要介護高齢者と障害者の共通のサービス事業所である「共生型サービス」が創設されます。これまで障害者サービスを利用してきた人が65歳以上となり、介護保険サービスを利用するようになると、それまでの障害福祉サービスが利用できなくなるケースがあり、見直しが求められていました。
新しい制度は、同じ事業所で高齢者と障害者の支援や介護を一体的に行うことができるもので、[1]訪問介護、[2]通所介護(地域密着型を含む)、[3]短期入所生活介護に適用されます。
例えば、介護保険の通所介護の事業所なら、都道府県への申請・指定により障害福祉サービスの「共生型生活介護」や「共生型放課後等デイサービス」の事業所となることができ、同じ場所・同じ職員で高齢者と障害(児)者の通所サービスが実施できるようになります。
これにより、高齢者・障害者それぞれのサービスの利用の利便性がよくなることに加え、地域のなかに世代や障害種別を超えた「インクルージョン(共生)」社会づくりの拠点が増えることが期待されています。
4 現役並み所得者の利用者負担が3割に
今年8月の利用分から、利用者負担が2割の高齢者(65歳以上の第1号被保険者)のうち、現役並みの所得がある高齢者は3割負担になります。3割負担となる所得の基準は、まだ正式には決まっていませんが、厚生労働省の案では次のように示されています(いずれも前年の年額)。
●合計所得金額(給与や事業の収入などから所得控除や必要経費を差し引いた額)が、220万円以上
●年金収入とその他の合計所得額が、単身世帯で340万円以上・夫婦世帯で463万円以上
これは、「単身世帯で年金収入のみ」の場合、344万円以上に当たり、高齢者全体の3%程度が該当すると推測されています。実際には、7月頃に各利用者に届く「負担割合証」の表記を見て確認することになります。
5 第2号被保険者の保険料が総報酬割に
第2号被保険者保険料(40〜64歳の介護保険料)は、各自が加入する医療保険の保険料と一緒に徴収されていますが、その算定方法が従来の「人数割」から「総報酬割」に変わりました。この改正はすでに昨年8月分の保険料から始まっており、3年間で段階的に実施されます。
従来は、同じ健保組合で加入者の平均報酬額の上位グループと下位グループで報酬に大差があっても、「人数割」のため被保険者から徴収される保険料は同額でした。つまり、所得水準の高い人が多い医療保険では保険料が相対的に割安になり、所得水準の低い人が多い医療保険では割高となる弊害がありました。それを「総報酬割」に見直すことで、公平で平等な保険料負担にしようとする改正です。
この改正によって、一般に所得水準の高い加入者が多い健保組合や共済組合の場合は保険料が上昇し、協会けんぽでは下がる傾向となります(個人差があります)。