“振り返り”でわかる
認知症の人への対応~チームケア【2】情報を共有
チームで目標を決めてケアを行う
チームケアを行う場合、それぞれの利用者に対し、チームとしてのその日の目標を立て、共有し、各自がどのような対応をすればよいのかを考えます。スタッフ同士が1つの目標を共有すると、日常ケアの中での情報交換もしやすくなり、一人ひとりの利用者の状態・変化を知ることが容易になります。
もちろん、対応方法と各自の役割も全員で把握するようにします。そうすることで、万一問題が生じた場合でも、お互いをフォローできるようになります。すでに発生している問題についても、直接携わっているスタッフだけでなく、チームの問題として共有し、一緒に対応を考えることが重要です。
さらに、うまくいったケアや対応についても、共有するようにします。たとえば、対応の難しい利用者との会話のなかで、その人の心からの笑顔を引き出すことができたというケースでは、どうしてうまくいったのか―話題なのか、メンバーなのかなど、その理由を分析し、次回のケアに結びつけていくようにします。この時、それぞれの職種や役割の中で得た情報を交換するという姿勢も必要になります。
このような分析や振り返りは、夕方のミーティングで行うなど、習慣づけるとよいでしょう。そうすることで「目標→実践→分析・振り返り→新たな目標」という循環が生まれ、今後のケアをよりよい方向に導くことができるようになります。話し合った事象と分析結果は、うまくいったことも、そうでなかったことも、すべて記録に残すようにします。話し合いに同席できなかったスタッフとも情報共有を図り、今後のチームケアにつなげるようにしましょう。
独協医科大学看護学部在宅看護学領域教授。看護師、保健師、介護支援専門員でもある。NPO法人認知症ケア研究所代表理事を務め、茨城県水戸市を中心に「デイサービスセンターお多福」などを運営する。
文/高野千春 イラスト/中小路ムツヨ