“振り返り”でわかる
認知症の人への対応~チームケア【1】「できない」を補う
チームで連携してスムーズなケアに
ケアマネジャー、介護福祉士、ヘルパー、看護師、理学療法士、作業療法士、ソーシャルワーカー、医師、家族など、介護を必要としている人には、実に多くの人々がかかわっています。そして、それらの人たちが1人の利用者に対し、協力、連携して行うのが「チームケア」です。
しかし、現実の場面では、十分な協力・連携を行うことはなかなか難しく、職種ごとのチームに分かれたり、職種間で上下の関係になったりするケースが少なくありません。
本来のチームケアを行うためには、まず、それぞれの職種が自らの役割を確認することが必要です。ただし、その役割だけを行えばよいということではありません。確認と同時に、スタッフ一人ひとりが、自分自身の能力の振り返りを行い、不足している部分を知ることが大切です。そして、スタッフが互いにできないことを補い合うことで、行き届いたケアの提供につなげていきます。「できない」と言い合える関係を築くことも、チームケアには必要なことなのです。
この考え方は、職種を超えたところでも同じです。1人の利用者を支えるスタッフとして、職種にかかわらず、それぞれの能力や長所を活かし、できない部分をカバーしながら、より充実したケアを実現していくようにします。本来のチームケアを行うことができれば、連携プレーによるスムーズなケアができるようになり、利用者に安心をもたらすことができるでしょう。
独協医科大学看護学部在宅看護学領域教授。看護師、保健師、介護支援専門員でもある。NPO法人認知症ケア研究所代表理事を務め、茨城県水戸市を中心に「デイサービスセンターお多福」などを運営する。
文/高野千春 イラスト/中小路ムツヨ