“リハビリを超えるリハビリ”
ハンドベルでつながる一体感【2】
指揮する職員に大切なのはアイコンタクトと“共鳴”
この日、練習したのは時代劇「水戸黄門」でおなじみの主題歌「あゝ人生に涙あり」です。1人ひとりに話しかけ、緊張を解きほぐしながらハンドベルの演奏に入っていきます。
「ここ、大変なところですよー。そう、いいですね」
「ばっちり合いましたね。○○さん、調子いいですね」
ハンドベルで演奏する人たちに向けて、指揮者の菊池さんからポジティブな言葉がどんどん飛び出します。大きな身振りで周囲の視線を引きつけ、約1時間という長さにも関わらず、利用者の集中力が切れることはありませんでした。
菊池さんが指揮者として心がけているのは「アイコンタクトと“共鳴”」だとか。
「演奏している方々に指揮をしながら“見ていますよ”というメッセージを送ります。すると、相手もこちらをじっと見て、どのタイミングで音を鳴らしたらいいかを“聞いてくる”。そのメッセージを受け取り、しっかり返す。時々、面白い顔を作ったりして(笑)。そうやって常にコミュニケーションを取ることで、お互い集中していられるんです」
もうひとつは「マイナスなことを言わない」ことだそう。
「例えば、高次脳機能障害の方が自分の出番ではない時にベルを鳴らしたら“今日はいい音が鳴っていますね!”とか、1人だけ周囲から外れた音を出している方には“もっとやわらかい音を出すとカッコイイですよ!”とか。マイナスなこともプラスに受け取ってもらえるような言い方をして、ポジティブに取り組める雰囲気作りを心がけています」
その他のレパートリーは「四季の歌」「いつでも夢を」「ふるさと」など馴染み深い曲から「たいせつ小唄」というオリジナル曲まで、バリエーションに富んでいます。
「演奏は、テレビで流れていた曲や、利用者様からリクエストのあった曲を“とりあえず、やってみる”ことが多いです(笑)。演奏してみると思ったより大変だったということもあるのですが、うまく演奏できた時はワーッと拍手が湧くこともあって。こういう姿に出会えるので挑戦してよかったと思えます」
音楽を演奏すること自体が持つ快感に加え、うまくいかなかった曲を上手に演奏できた経験を通して得られる成功体験。その達成感や喜びを全員で共有できるのが、ハンドベルの1番の魅力と言えそうです。