“自分だったら”の視点で見直そう 接遇とマナー
自分がされて嬉しい接遇とは?
介護現場での接遇は、「相手に敬意を払う」ことが大切なポイントになります。しかし、敬意を払う対応といっても「具体的にはどういうこと?」と思う人も多いでしょう。それを知るためのコツは、「自分だったらどうされたいか?」という視点で考えること。自分に置き換えてみると、どうすべきかが見えてきます。その基本とシーン別の実践法を紹介しましょう。
1つ、事例を紹介します。認知症の症状によって、攻撃的な行動が強く出ている方を受け入れたことがありました。初対面の際、まずお茶を出して、ごあいさつしました。落ち着いた声色・表情で「お茶はいかがですか」と言いながら丁寧にお茶を置くと、その方も「ありがとう」と落ち着いた様子で、お茶を認識しておいしそうに飲んでいる姿に、ご家族が驚いていました。
ここからわかるのは介護者側が丁寧に対応することで、相手の行動が変わるということです。信頼関係を築くうえで大切なのは、言葉づかいや所作、そして身だしなみ。当施設ではそれらを「リスペクトケア」と呼び、実践しています。
リスペクトケアとは相手に敬意を払った対応のことですが、難しいことではありません。「自分がされて嬉しい、気持ちがよい」ケアなのです。「自分だったらどうされたいか」の視点で考えるとわかりやすいでしょう。
相手に敬意が伝わると、まず反応が変わります。尊重されているという安心感が信頼関係につながり、ケアを円滑に行えるようになります。また介護者が利用者から敬意を示されることも多くなり、自信ややりがいも生まれます。日々のちょっとした場面でできることを中心に紹介しますので、ぜひ役立てていただければと思います。
本誌では、場面別に敬意を払った接遇の実践法などを詳しく解説しています。
社会福祉法人育明会 特別養護老人ホーム レジデンシャル常盤台施設長。東洋大学社会学部卒。看護職、メディカルソーシャルワーカーを経て、社会福祉士、介護支援専門員の資格を取得。大田区立特別養護老人ホームたまがわの特養第一課課長、介護老人保健施設都筑シニアセンターケア統括部長などを歴任。2011年4月より現職。『気持ちが伝わる 介護スタッフのためのマナーと声かけ』(学研教育出版)など編著書多数。
文/松崎千佐登
イラスト/しまだ・ひろみ