高齢者と障がい者の共生型デイ
ランチを調理する“働くリハビリ” で地域の一員に【3】
一 人ひとりが輝ける場を作り、その輪を未来にもつなげていきたい
「カルチャースクール亀吉」は、半日型のデイサービス。午前はヨガなどの日替わり体操+料理リハビリが基本形。この日も料理に取りかかる前の時間帯には、レストランの建物内にあるデイのスペースで、ストレッチを中心にしたシニアヨガを行っていました。曜日ごとに、太極拳、ラフターヨガ(笑いヨガ)、足腰を強化するファンクショナルエクササイズなどを行っています。
「これらの身体エクササイズに、調理による運動量を加えると、週2~3日の参加で、健康寿命を伸ばす推奨運動量を確保できることがわかっています」(木村さん)
午後は、農業リハビリや書道、健康麻雀、パソコン・スマホ教室などを、曜日や希望によって行います。なかでも人気が高いのが農業リハビリ。車で20分程度の距離にある福祉農園の一画で、1年を通して野菜やハーブ類などを作っています。「市民農園を拡げる会」のメンバーがボランティアで普段の管理を担当し、利用者が種まき、草取り、収穫などをしに訪れるしくみです。
この日の午後も、気持ちのいい晴天の下、収穫をする利用者の姿がありました。その一人は、かつて青果店を経営していたそうで、慣れた手つきで野菜を扱っていました。
「当法人の理学療法士が、農業リハに同行した時、利用者さんが『びっくりするくらいの量の野菜を持って動いている』と言っていました」と木村さん。自然のなかでやりがいを感じる時、人は思いもよらない潜在能力を発揮できるのかもしれません。収穫した野菜は、レストランで出す料理に使ったり、店内で販売したりしています。
「カルチャースクール亀吉」をはじめ、さまざまな福祉施設の運営や活動を行う同法人ですが、法人全体の狙いは「永続発展する地域作り」。国連の提唱する「持続可能な開発目標(SDGs)」にも参加しています。
「介護される側になり自信を失っていた利用者さんも、ここでは一人ひとりが輝き、やりがいを持って社会に貢献しています。行き止まりではなく、続いていく輪の一員です。その輪が自然に拡がり、未来へと続いていく風土作りをめざしています」(鈴木さん)
デイや障害者就労支援事業所の利用者、ボランティア、子ども会、レストランのお客さんなど、地域の老若男女がにぎやかに集い、楽しむ「かめキッチン」の風景は、その輪を象徴しているように見えました。
利用者が併設のレストラン「かめキッチン」の厨房でランチメニューを調理。隣の障害者就労支援事
業所で作ったパンもレストランで提供する。高齢者と障害者が共に働く共生型のデイ。
文/松崎千佐登 写真/中村年孝