自身を取り戻しQOLも向上!
ショッピングリハで先進的な試みを行う半日型デイ【1】
私たちが日常何気なく行っている買い物。実は、心身のさまざまな機能を必要とします。そこに着目した「ショッピングリハビリⓇ」をはじめ、先進的な取り組みを行う半日型デイサービスをご紹介します。
自然な買い物の動きがリハビリに。運動・認知機能の向上で生活が変わる
道路沿いにあるおしゃれなカフェのような2階建ての建物。ここに「デイサービスセンターまちいろ」があります。半日型デイサービスの3時間という時間枠のなかで、数々の取り組みを行っています。
なかでも特徴的なのが「ショッピングリハビリⓇ」。名前のとおり、買い物を楽しみながら自然にできるリハビリです。「買い物は、店内を歩く、手を伸ばして商品をとる、カゴに入れて運ぶなど、多くの動作の連続。これが、とてもよいリハビリになります。しかも『楽しい』。ここが重要です」
こう語るのは、同デイ管理者の山口真さん。「買いたいものを手にとって選ぶという楽しみがあると、普段は難しい動作も自然にできるのです。また、普通のリハビリと違って、前向きに継続できます」と山口さん。
さらに、「空間を把握して買いたい商品のある棚に行く」「吟味して選ぶ」「レジでお金を払う」など認知機能も必要で、脳のリハビリにもなります。買い物は、楽しみながら体と脳のリハビリができる絶好の機会なのです。
とはいえ、歩行が不安定な利用者が買い物に行くとなると、転倒などのリスクを伴います。そこを補うのが、同デイで取り入れている「楽々カート」です。これは、作業療法士の杉村卓哉さん(光プロジェクト株式会社代表取締役)が開発した「前腕支持型歩行器を兼ねたショッピングカート」。前腕で体を支えながらカゴを運べるので、歩行にやや不安のある人でも、買い物中の動作が安定する画期的なカートです。
「当デイを立ち上げる時から、買い物を通じたリハビリは必要だと思っていました。それに役立つカートがあると聞いて調べたところ、これは必須だと感じて導入したのです」(山口さん)。
現在、同デイでは、このカートを5台備え、希望する利用者がショッピングリハビリをできる態勢が整っています。
楽々カートを使ってのショッピングリハビリは、「安定して歩きやすい」「自分で買い物ができるようになって生活が変わった」と好評です。必ずスタッフが付き添い、歩行や動きをアドバイス。近場の店で慣れ、歩行が安定してきたら、徐々に遠くの店へとレベルアップしていきます。
さらに、「買い物の付き添いを通じて、食生活の見守りができるのもメリット」と山口さん。買い物の内容やその時の会話から、栄養の偏りなどが感じられる場合は、食事に関するアドバイスも行っているそうです。
文/松崎千佐登 写真/中村年孝