アニマルセラピーを取り入れたデイ
動物とのふれあいで機能維持・改善を目指す【2】
施設内を一周して心身をリフレッシュ。楽しみながら運動できる工夫が満載!
もちろん、動物との交流は強制ではありません。「希望する方がスタッフと一緒にアニマルルームに入っています。通所介護を利用している高齢者の方々の半数が動物との交流を楽しんでいます」と山田さん。
自主性を重んじているのは機能訓練も同じです。そのひとつが「あ・み・ず一周トラベル」。これはゲームコーナー⇒アニマルルーム⇒トレーニングコーナーと、体を動かしながら広いロビーを一周するというもの。
まずは、ロビーの一角にあるゲームコーナーから。ランダムに飛び出てくるワニの頭を叩く「ワニワニパニック」は腕の筋肉はもちろん、反射神経も鍛えられます。画面に現れる1から30までの数字を順番にタッチしていく「サーティーテスト」は脳機能と瞬発力の向上に役立つとのこと。これらのゲーム機は大人気。「面白いよ」とリズミカルにワニの頭を叩いている男性利用者がいました。叩いた数は得点として表示され、再挑戦する人も。普段は杖が必要な80代の女性は、「サーティーテスト」のときは杖をゲーム機の横に置き、自力で立って楽しんでいるそうです。「1日のほとんどを座って過ごす利用者様も少なくありません。ゲーム機の前で体のバランスを保ちながら立ち続けるだけでも身体機能向上の効果があります」と、介護予防指導士で栄養管理士の菊田貴之さん。
ゲームのあとはアニマルルームやエクササイズマシンへ。ロビーには持ち運びができる電動ウォーカーやレッグプレス、振動マシンなどが置かれており、誰でも自由に使うことができます。菊田さんの指導のもと、電動ウォーカーの上を歩く人もいれば、マシンで肩関節の可動域を広げている人もいました。レッグプレスを使って筋力を鍛えている人もいます。
スタッフは利用者の自主性を大切にしつつ、個人に合ったトレーニング法を提案。また、効果が実感しやすいよう「レッグプレス〇回成功」など、できた数を数値化しています。「みなさん『体を動かすと気持ちいい』と言ってくれます。立ち上がることができなかった車いすの方は、トレーニングを続けるうち5分以上も立位を保持できるようになりました。体を動かすことで気持ちも明るくなるのでしょう。ほかの利用者様とおしゃべりを楽しむようになる方も多いです」(菊田さん)
また、山田さんはこう言います。「ゲーム機で体をほぐし、アニマルルームに行ってからトレーニングマシンへ、とおすすめの順番はありますが、それぞれ自由に楽しんでいらっしゃいます。ガチガチにカリキュラムを決めるのでも『こうせねば』でもなく、ご自身が好きなように楽しむなかで、自然に機能訓練ができる仕組みを構築しています」
文/佐藤ゆかり 写真/浦野浩之