音楽療法に特化した音楽デイ
生演奏にこだわり合唱に取り組む音楽デイ【2】
発生・発音練習にもたっぷり時間をかけて。どんどん声が出るようになります!
体操で体も心もほぐしたあとは、歌唱レクに向けて声を出しやすくするとともに、機能の向上を目指した発声・発音練習が始まりました。
発声練習はスタッフのピアノ演奏をBGMに、メトロノームのリズムに合わせて薄い布にストローで息を吹きかけます。最初は短く「フッ、フッ、フッ」、次は長く「フー、フー、フー」というように。最後は歌うときの息継ぎと同じく“長く4拍息を吐いて息を吸い、また長く4拍吐く”を繰り返します。「ストローを使うと、口やのど、首の筋肉がより鍛えられます。長く深く息を吐くことはリラックス効果もあります」と永野さん。
次は発音練習です。永野さんがホワイトボードに「“あ”は〇」というように口の形を描き、利用者はそれを意識して「あ、い、う、え、お」と発音。次は唇の形を意識して「まみむめも」「さしすせそ」と発音、「はひふへほ」で息の出し方を練習します。最後はmp(メゾピアノ。やや弱く)、mf(メゾフォルテ。やや強く)などホワイトボードに記された楽譜記号に沿い、『花は咲く』の言葉を強弱をつけて発しました。
その様子はデイサービスというより音楽サロンのよう。そして練習を重ねるうち利用者の声が大きくなり、発音が明確かつ美しくなっていきました。きれいな声が出る喜びに気持ちが沸き立ち、またお腹から呼吸して声を出すことで血行がよくなるのでしょう。練習するうち、利用者の頬が上気していきました。
体操も発声・発音練習のプログラムも本格的です。「ここでの音楽療法は機能向上を目指しています。また、易しすぎることは利用者様の興味もやる気も損ねてしまいやすい。『楽しい』はもちろん、『できた』という達成感を得てほしいのでプレッシャーにはならず、でもほんの少しだけハードルが高いプログラムを工夫しています」(渡邉さん)
また、利用者の「できるところまで自分でやりたい」という気持ちを大事に、安易なサポートはしないようにしているとのこと。
その一方で、手助けが必要な人もいます。「利用者様の様子や状態をしっかり見極めることを大切にしています。そして、例えば耳が遠い方にはスタッフが優しく膝を叩いてリズムをとりながら一緒に体操したり、手が不自由な方にはふりつけを変えたり、認知症の方にはその都度『ストローを吹いてください』などと声をかけたり、必要な方に必要なサポートを心がけています」(渡邉さん)