うまくいかないのはなぜ?
一人で徘徊する認知症利用者への対応【前編】
Q 利用者が施設内を一人で歩き回るので、外へ出てしまわないか心配で目が離せません。どうしたらいいでしょうか?
Aさんは一人で施設内を歩き回ることが度々あります。座るように促しても、ずっと歩いています。施設の外へ出ようとして騒ぎになったことも。以来、外に出てしまうのではないかと気になり、目を離すことができず困っています。
A 一人歩きの原因の多くは「不安」。無理に止めるのではなく、まずは、どうしたら安全に歩いてもらうことができるかを考えましょう。
介護者は、「一人歩き=危険で、させてはいけないこと」ととらえがちですが、見方を変えると本人に気持ちの安定をもたらし、筋力の維持にもつながるという考え方もあります。まずは、歩きたいという気持ちを尊重してみましょう。
対応のポイント
一人歩きをする人の多くは、認知症によって落ち着かない状態にあると考えられ、その背景には「自分の居場所がない」「家に帰りたい」などの不安感があります。歩くことでその不安を解消しようとしていて、そのような人を「座ってくださいね」と引き戻そうとすることは、かえってストレスを与えることになってしまいます。また、BPSD(行動・心理症状)の悪化やアパシー(感情が鈍くなる、無気力な状態)の発症につながりかねません。
一人歩きには、確かに転倒や事故の恐れがあります。しかしその半面、気持ちを落ち着かせ、歩行運動による筋力の維持・向上、さらに、食欲増進や夜間の熟睡につながるなど、よい面も多くあります。
一人歩きを「困った行動」ととらえ、やめさせることを前提に考えるのではなく、どうしたら安全に自由に歩いてもらえるかという方向で考えてみましょう。「手すりを使うように声かけをする」「出入り口が見えないようにする」など、ちょっとした気配りや工夫をすることで、“歩ける”環境を整えることができます。職員がそのためのアイデアを出し合うことも大切です。