うまくいかないのはなぜ?
箸や食器を持とうとしない認知症利用者への対応【後編】
食事動作につなげる上手なサポートのヒント
できないことを何かのせいにする
例えば、箸を持てない利用者には、「すみません。いつもはこちらのお箸を使っていましたね」と声をかけ、別の箸を渡します。「箸が違っているから持てない」と何かのせいにすることで自尊心を保てるようにしましょう。
食べやすい工夫でできることを増やす
食器を扱いにくそうにしていたら、ご飯をおにぎりにする、飲み物にあらかじめストローを差しておく、バナナの皮を少しむいておくなどの工夫を。食べやすくすることで、失行・失認によりできないことをサポートします。
スタート動作から再度サポートする
途中で箸を置いてお茶を飲むなど、食べる動作が中断すると、また箸や食器の持ち方がわからなくなってしまうことがあります。その場合、箸や茶碗を手渡して最初の動作から補助するなど、続きの動作に移れるようにします。
体に軽く触れることで動作を促す
食事の途中で、次にどうしたらいいのか戸惑っている様子が見られたら、驚かせないように注意しながら、手や腕に軽く触れてみましょう。続きの動作が促され、食事を継続できることが多いようです。
監修/伊東美緒
東京都健康長寿医療センター研究所研究員、看護師、保健師。介護施設や在宅での認知症ケアを研究。著書に『認知症の方の想いを探る~認知症症状を関係性から読み解く~』など。
文/高野千春 イラスト/田上千晶