仲間と語り合いながら創作できるデイ
創作レクに特化したデイサービス【1】
刺繍、パッチワーク、編み物、ペーパークラフト、油絵……。レクリエーションの時間は、自分の選択したものづくりのみ。従来にはない“創作デイ”が利用者にもたらしたものとは?神奈川県鎌倉市にある「デイサービス やと」に伺いました。
歌やゲームなどのレクリエーションはなし。創作活動を主軸としたデイを始めて8年
神奈川県鎌倉市の住宅街の一角に建つ「デイサービス やと」。古都・鎌倉のイメージと調和した和風の建物の中に入ると、壁にはさまざまな創作物が飾られていました。裁縫や編み物で仕上げたバッグ、木工作品、手芸作品、ペーパーフラワー、人形、油絵……、その完成度の高さは驚くばかり。「すべて利用者様が作る作品です」と施設長の山田弘さん。
「みなさん、ものづくりを楽しみ、本格的な作品に仕上げられています」そして、これこそが“やと”の最大の特徴です。ここでは歌やゲームなどのレクリエーションはありません。体操のほかは、レクは創作活動のみという“創作デイ”なのです。山田さんが空き家となった元文房具店を改装し、“やと”を開設したのは2010年のこと。
「当時鎌倉市には60数か所のデイがありました。既存のデイと同じことをしても作る意味がない。元が文房具店だったという事もあり、お譲りいただいた画用紙や絵の具、のり、テープなどが山のようにありました。高齢者の方の中には、編み物や手芸や油絵など得意な方がいらっしゃいます。若い頃からの趣味や職業で培ってきたものを本格的な創作活動として継続することが、利用者様の楽しみと機能訓練につながるのではないか、と考えました。そこで『好きなものづくりをしながら自然なときを過ごせるデイサービス』を目指し、思い切って創作に特化したデイにしたんです」
それから8年。「創作中心で利用者様が来てくださるか」という山田さんの不安をよそに、24名の定員は満員御礼。いくつものデイサービスを見学したものの「興味があるレクがない」と通所を拒まれていた方も“やと”との出会いでデイへのイメージが変わり、お好きな絵を描くために通い続けて7年が経ちます。「着物の仕立てをしてきたこともあり、手先を使うことが好き」とデイを楽しみにしている女性もいます。
「利用者様は創作が好きな方や得意な方ばかり。みなさん、ものづくりを楽しんでくださっています。もちろん、入浴などの介助も行っていますが、利用者様は創作のついでにお風呂に入るという感じです(笑)」