会話が弾むデイサービスを目指して
日本の伝統文化で本格志向のレクを【2】
ご当地ネタや思い出話など伝統文化レクを通して会話が広がる
月1回、伝統文化レクを開始して約1年。事業所ごとにオリジナルの工程も加えられています。例えば一合枡お神輿。「ヒューマンライフケア風鈴の湯」ではスタッフが金色の紙で紋を作り、利用者がお神輿の屋根に貼っていました。すると、なおのこと豪華なお神輿になりました。
「雛人形を作ったときは『お雛様の着物の裾は長いほうが艶(あで)やか』という利用者様のアイデアで裾を長くした事業所もありました。それぞれにアレンジをし、楽しんでいます」
また「立体的な作品の組み立ては、洗濯物をたたむことや、着脱動作全般に効果あり」というように、作業療法士が分析。作業による日常生活動作の向上を目指しています。「動作が困難な場合は、セロテープなどで素材や道具を固定」など、誰でもできるように工夫もされています。
そんな伝統文化レクは大好評。アンケートでは利用者の97%が「楽しい」と答えています。一合枡お神輿の創作でも「面白いね」「楽しいね」とデイ仲間と声をかけあう利用者が続出。一合枡で飲むふりをする男性利用者もいて、みなさん実に楽しそう。
また「子どもっぽいレクは……」と尻込みしていた男性も本格的な創作物には好奇心がそそられるようで、男性のレクリエーション参加者が増えたとか。レクを見学に来て「自分もやりたい」とデイに通うようになった人もいるそうです。
「ただし、伝統文化レクの最大の目的は創作そのものではありません。一番の目的は、コミュニケーションを深めていただくことです」
そして、それはすでに形となっています。一合枡お神輿を創りながら「自分の出身地ではこんなお祭りが」と利用者同士が思い出話に花を咲かせていました。あるデイサービスでは「この地域では神輿は春の祭り、秋の祭りは山車(だし)」といった話が利用者からあり、「そうなんですか」とスタッフを驚かせたそうです。
「お正月飾りを創ったときもしかり。『鏡餅の2つの丸餅は太陽と月を表している』など、スタッフが利用者様に教えていただいています」
さらにお正月飾りの創作レクをきっかけに「故郷ではお雑煮は〇〇味」とご当地話に花が咲き、土地話から「子どもの頃、冬はスキーで学校へ行った」などと思い出話がどんどん広がったそうです。
「伝統文化レクをきっかけに、利用者様が自分のことを語ってくださるようになりました。ご当地ネタって盛り上がりますよね。スタッフも他の利用者様も『そうなんだ』『私の出身地では』と会話が弾んでいます。さらに手作業の得意な方が苦手な方を手伝ったり、利用者様に役割ができたことも大きな成果のひとつです」