うまくいかないのはなぜ?
目の前の食事を食べない人への声かけ[認知症ケア]
Q 目の前に食事があるのに食べてくれない人にはどうしたらいい?
食卓にはついてくれるけれど、食事に手をつけようとしないAさん。声をかけて食べるように促しても、顔をそむけてしまい、手は食卓の下に下ろしたままです。どこか浮かない様子で、箸を持とうともしてくれません。
A 食を楽しむことができるよう「食べやすくする」「食べたくなる」工夫を
利用者の食事で大切にしたいのは「食は楽しみ」ということ。健康維持や栄養補給ばかりに目を向けると、その視点が欠けてしまいます。食器や盛りつけ、味つけなどの工夫で楽しく食べてもらえるようにしましょう。
【対応のポイント】
まずは食べない理由を探ります。薄味だと料理の違いがわかりにくく、飽きてしまうことがあります。また、認知機能障害によって、食べ方がわからなくなったり、食べ物を認識できなくなったりすることも。利用者の様子を観察し、いろいろ試してみましょう。
薄味でも少量のしょうゆやソース、七味などのスパイスを用いると味にメリハリがつき、食欲を増進します。また、その人の好きなものを準備して、とにかく食べてもらうことも大切です。箸やスプーンを持たせたら食べ始めた、ということもあります。
その食事を抜いても次の食事をしっかり食べればよいと、1日単位で考え、無理じいしないことも大切です。
監修/伊東美緒
東京都健康長寿医療センター研究所研究員、看護師、保健師。介護施設や在宅での認知症ケアを研究。著書に『認知症の方の想いを探る~認知症症状を関係性から読み解く』など。
文/高野千春 イラスト/田上千晶