一人ひとりに寄り添うケア
アロマテラピーで心と身体を解きほぐす[1]
「ご利用者の心に寄り添いたい」介護職員の想いから生まれたアロマテラピー
「調子はどうですか?」やわらかな香りと穏やかな音楽の流れる小部屋「アロマルーム」で、介護職員の伊藤淳子さんが、ゆったりと話しかけながら磯部さんの足をやさしくマッサージしています。
アロマテラピーを始めたきっかけは、特別養護老人ホーム「やすらぎ特養」の介護主任の、“やってみたい”という想いに理事長が理解と支援を示したことからでした。専門家である佐藤ユミ子先生に手紙を出して、施設へ講習に来てもらった事からすべてが始まりました。
アロマトリートメントを行う介護職員は、Flower ’s Room 代表であり英国IFA認定プリンシパルテューター・英国IFA認定アロマセラピストの佐藤先生による研修を受けた方々。
利用者の健康を第一に考え、安心・安全のケアをする万全の体制が整えられています。
一対一のコミュニケーションで心と身体を癒やすアロマトリートメント
「利用者の方とじっくりと話をする時間はなかなか取りづらいものですが、アロマトリートメントを始めてからは一人ひとりと向き合って会話する時間が増えました」。そう語るのはアロマテラピー活動の中心となり介護職員の指導にもあたる伊藤淳子さん。
肌から直接有効成分を取り込むアロマトリートメントは、リンパの流れを良くし、筋肉の緊張をほぐすと同時に、芳香の中に含まれる成分を吸い込むことによるリラックス効果も期待できます。
肌と肌を直接触れ合わせながらコミュニケーションをとることで、精神的に安心感を得られる点もアロマトリートメントの良い点。「施術している間は、いつも利用者さんとお話ししているんです。体のことはもちろん、家族の話や、施設内の出来事、いろんなことをお話ししてくださるんです。時には、職員の悪口が出ることも(笑)」
「アロマルーム」からは2人の楽しそうな笑い声が聞こえてきます。身体の緊張がほぐれ心がリラックスするので、思わず本音が。
「アロマトリートメントを続けていく中で、身体に好転が見られることは喜びですが、利用者の表情が豊かになっていくのを見るのがもっと嬉しい」と伊藤さんは語ります。
文/江川 司(KWC) 写真/中村年孝