義歯と認知症
歯の状態が転倒・骨折に つながるのはなぜ?
【考えられる理由】
咀嚼筋(そしゃくきん)からの神経伝達が減り、バランスが取りづらくなった
ヒトの体は重い頭部が一番上に位置しているため、重心が高くバランスが取りづらい構造になっています。そうした不利な条件の下で、上半身と下半身をうまく使いながら二足歩行をしているのです。しかし、実は歯の状態が身体的なバランスに関係しているというのは、盲点かもしれません。
頭部のバランスを司る神経は咀嚼筋から脳へ伸びていますが、歯が失われることで咀嚼筋からの神経伝達が減ります。すると、顎の位置や頭部が不安定になり、転倒につながりやすくなってしまうのです。
神奈川歯科大学 大学院歯学研究科 口腔科学講座 社会歯科学分野教授
山本龍生
岡山大学歯学部、岡山大学病院を経て現職。社会学的見地を踏まえて歯科医学・歯科医療を追究する社会歯科学が専門。日本口腔衛生学会評議員、日本歯科医療管理学会理事。主な著書に『歯科医療管理―医療の質と安全確保のために』(共著、医歯薬出版)などがある。
イラスト/竹口睦郁