認知症の人を地域で支える
認知症の人が「暮らしやすい街」~”ここにいたい”と思われる環境
仮に認知症の人が集える場所をつくっ認知症の人と家族を支えるたとして、その場に「本人を連れていく」という発想では、「その人が中心」になっているとは言えません。介護現場でも、デイサービスなどに「その人を連れてくる」ことが目的になっていないでしょうか。
本人が心から「ここにいたい」と思える環境でないと、その人を主人公とした社会参加とはなりません。その点を考えた時、サポートというのは、その人が自然に「している」行動の中で築いていくことが必要です。
例えば、本人がその人なりの目的で「どこかへ」出かけたとします。その出かけた先々で、商店街や公共交通機関の人がサポートできてこそ、その場所が認知症の人を支える「地域資源」として機能するわけです。
ただし、そのためにはサポート側にその人を理解し、信頼を獲得するだけの対応力が求められます。また、同居する家族が「困ったな」と思った時に、気軽に相談できる多様な機関があれば、本人の思いに自然に寄り添える余裕も出てくるでしょう。このように、地域全体でその人らしさと家族の思いを支えるしくみが築けてこそ、認知症の人が「暮らしやすい街づくり」が実現できるわけです。
認知症の人と家族を支える「地域資源」には、先に述べた資源のほかにバスやタクシーの運転手や駅員などの“乗り物”(上図)、かかりつけの医者や、かかりつけの薬局の“医療”(下図)、市役所など、気軽に相談にのってもらえる身近な機関などの“機関”などが挙げられます。
出版社勤務を経て、介護保険スタート前から高齢者介護の現場取材を続けている。常に当事者とその家族、現場従事者の視点を尊重しつつ、医療・介護専門誌への寄稿や書籍執筆のほか、講演やラジオでのコメントなどを行う。主な著書に『認知症ケアができる人材の育て方』(ぱる出版)『改正介護保険早わかり』(自由国民社)などがある。
イラスト/ 瀬川尚志