利用者の気持ちを考えた認知症ケア[2]~認知症の四大疾患
認知症の四大疾患
■アルツハイマー型認知症─現存能力を活用したケアを
[原因と特徴]
βアミロイドとよばれる異常なたんぱく質が脳全体に蓄積し、大脳の萎縮を進行させます。その結果、脳の機能が全般的に低下します。原因やメカニズムはまだよくわかっていません。中核症状(記憶障害、見当識障害、実行機能障害など)がほぼ出現します。
[治療法]
現在のところ根本的な治療法はなく、病気の進行を止めることはできません。しかし対症療法として、病気の進行を遅らせる薬が使用されています。
■血管性認知症─血液サラサラになるケアの提供を
[原因と特徴]
脳梗塞、脳出血などによる脳動脈硬化で、脳の一部分の血流が妨げられ、精神活動機能に障害が生じます。発症場所で症状が異なり、本人にとって都合のよいことだけ忘れる、症状の現れ方にむらがある、わずかな刺激で泣く(笑う)という感情失禁が多いなどが特徴です。
[治療法]
脳動脈硬化の背景にある高血圧症や脂質異常症、糖尿病などへの薬物治療や生活習慣改善で、発作の再発を防ぐことが重要です。リハビリテーションやデイサービスなどを利用して、自発性の低下や廃用性の変化(使わないことでその機能が衰えてしまうこと)を予防します。
■レビー小体型認知症─日内変動にケアを沿わせる
[原因と特徴]
レビー小体(脳内にたまった不要なたんぱく質)が蓄積した結果、神経細胞が損傷を受けて発症します。特徴は、認知機能障害が大きく、パーキンソン病のような病状(小刻みな歩き方や手足の震え、筋肉の硬直など)がしばしば起こる、実際はいないのに「人がいる」などと非常にリアルな幻視があるなどが挙げられます。また自律神経の障害のため起立性低血圧を起こしやすく、転倒には特に注意が必要です。アルツハイマー型認知症に比べて早く進行します。
[治療法]
薬物療法では、アルツハイマー型認知症薬、抗パーキンソン病薬が使用され、後者の場合、精神症状の悪化を招くことも。幻視・幻聴・妄想に対する抗精神病薬の使用も同様で、慎重な投与が必要です。
■前頭側頭型認知症(ピック病など)─こだわりを尊重する
[原因と特徴]
前頭葉と側頭葉の脳細胞の働きが障害を受けて起こります。人が変わったように傍若無人になる、行動の抑制がきかなくなるなどの特徴的症状が現れます。本人には病気の意識がなく、万引きなど反社会的行為が出現する場合もあります(以上、前頭葉の障害)。言葉によるやりとりが困難になることもあります(側頭葉の障害)。
[治療法]
脳細胞の働きを障害する物質は解明されましたが、根本的な治療法はまだみつかっていません。
※六角僚子
東京工科大学医療保健学部看護学科教授。看護師、保健師、介護支援専門員でもある。NPO法人認知症ケア研究所代表理事を務め、茨城県水戸市を中心に「デイサービスセンターお多福」などを運営する。
この記事が掲載されている号
レクリエ 2014 3・4月号
74-75ページに掲載ページに掲載
おもなレク
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