利用者の気持ちを考えた認知症ケア[1]~認知症の四大疾患
認知症の利用者の気持ちを考え、日常生活の質を高める「アクティビティケア」が注目されています。実際に利用者が心から喜ぶケアとはどのようなものなのか? 認知症ケアに詳しい六角先生に、自身が運営するデイサービスでの実践から得たノウハウを、アドバイスしていただきます。
まずは「認知症を病気として理解すること」から。アクティビティケアを実践するためのこの考え方を、疾患別のケアのポイントとともに解説します。
■「認知症」とはどのようなものか?
「認知症」とは、いったん正常に発達した脳の機能が日常生活や社会生活を営めない程度にまで持続的に病的に衰退した状態をいいます。例えば、毎朝同じ時刻に「では行ってくるよ」と出かけようとしたり、調理の際にたびたび鍋を焦がして家族を冷や冷やさせたりなどは認知症の症状といえます。
こうした症状は病的な機能障害からくるもので、認知症は「病気」なのです。ただし、「認知症」はあくまで“総称”。認知機能に障害がある状態を表す言葉であって診断名ではありません。
骨が折れた状態は「骨折」といいますが、診断名は「大腿骨頸部骨折」「前腕骨折」などとなります。これと同様に、認知症は「アルツハイマー型認知症」「血管性認知症」「レビー小体型認知症」「前頭側頭型認知症」という診断名があります。これらを認知症の四大疾患といい、現在は治癒が見込めない疾患とされています。
■適切なケアのために正確な診断を
認知症を引き起こす原因は多種多様で、脳疾患だけでなく、うつ病や薬剤、ストレスなどにまで及びます。原因によっては、治療や対応が可能なケースもあるので、四大疾患かどうかをきちんと診断することがとても重要です。「最近物忘れが激しくて、スケジュール管理ができない」と訴えてきた67歳の男性は、問診と画像、心理テストを受けた結果、「うつ病」と診断されました。
うつ病に対しては脳の活性化を図る抗うつ薬が処方されます。これが「認知症」と誤診されてしまうと、認知症進行抑制薬が処方され、うつ病に対する治療は行われないことになります。
逆に、認知症がうつ病と診断された場合は、抗うつ薬が処方され、その結果、行動のコントロールがきかなくなり、精神症状が出現する危険性があります。
このように、正確な診断がなされないと、正しい治療やケアが受けられなくなります。これは裏を返せば、診断が正確であれば、ケアがしやすくなるということ。同じ認知症でも、疾患によって症状もケアのポイントも異なります。「この利用者さんは認知症ね」と画一的に捉えず、適切なケアのためにも診断の必要性を理解しましょう。
※六角僚子
東京工科大学医療保健学部看護学科教授。看護師、保健師、介護支援専門員でもある。NPO法人認知症ケア研究所代表理事を務め、茨城県水戸市を中心に「デイサービスセンターお多福」などを運営する。
この記事が掲載されている号
レクリエ 2014 3・4月号
74-75ページに掲載ページに掲載
おもなレク
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