コミュニティの力を生かして
住み慣れた地域で最後まで[2]
団地に住む元気な高齢者が介護を必要とする人を支える
取材に訪れたこの日は、ランチタイムが終わった午後、「ゆいま〜る食堂」を会場に、高齢者住宅の住民と小規模多機能の利用者が交流する茶話会が開かれていました。茶道のたしなみがある住民二人が、ボランティアでお茶をたて、ともに抹茶とお菓子を味わったあとは、コーラスを楽しむという内容です。
「みかんの花咲く丘」や「月の砂漠」など、懐かしい童謡や歌謡曲をみんなで一緒に歌ううちに笑顔がこぼれ、サポートする側とされる側という垣根はなくなって、ごく自然なコミュニケーションが行われている様子がうかがえました。
高齢者住宅の有志が結成した「ぐり〜んはぁと福の会」による歌やゲームのひとときは毎週2回開催されており、土本さんによれば、「利用者の皆さんはコーラスができる火曜と金曜をとても心待ちになさっています。
ほかにもフラワーセラピー、体操教室、絵手紙など高齢者住宅で主催しているイベントにも参加することで、レクリエーションの幅が広がります」とのこと。
地域に溶け込むことで介護施設の扉を開きたい
「ぐり〜んはぁと」では、さらに広く地域に溶け込むために、多様な活動を積極的に行っています。「小規模多機能は内部で三つのサービスが完結してしまうので、ともすれば閉じた世界だと思われがちです。地域で広くここを使っていただくためには、私たちから発信していく必要があると思っています」と土本さん。
「ぐり〜んはぁと」のそばにある大規模な団地の集会場で開かれている介護相談会もその一環。より多くの地域の人々から介護に関する悩みや相談事を聞いてアドバイスをすると同時に、小規模多機能とはどんな施設なのかもわかりやすく伝えます。
一方、下校する地域の小学生を見守る「スクールガード」の活動にも、高齢者住宅の住民と「ぐり〜んはぁと」の利用者が一緒に参加しています。「参加者は毎月決まった日の下校時刻になると腕章をつけ、通学路で下校する子どもたちを見守ります。話しかけてきたり、手を振ったりするお子さんもいるので、みなさん、とても喜んでいますね」と五十嵐さん。
子どもたちと接するうれしさだけでなく、自分が地域の役に立っているという実感が、生きる喜びにつながっているのでしょう。