効果を上げる回想法
ケアに生かすための回想法~グループ回想法
回想法には、1対1で行う個人回想法と、5~10人程度で行うグループ回想法があります。個人回想法は心理療法的な意味合いが強いので、介護施設で行うにはグループ回想法が適しています。
集団で取り組むメリットは、お互いの話に刺激を受け、記憶がより鮮明によみがえり、話題が広がりやすいことです。さらに同じ時代に生きた者だからこそわかる、苦しみや悲しみ、喜びなどを共有するうちに仲間意識も芽生えます。
例えば、認知症のあるAさんは、参加当初は表情も乏しく、ほかの人の話への反応もありませんでした。けれどある時、年齢の近いBさんの苦労話を自分のことのように感じ、共感したことから気持ちが通じ合い、やがてほかの参加者へも関心が広がり、表情もやわらかくなっていきました。
認知症であっても相手を気遣う感情は残っているので、仲間ができて生きがいを感じることで、心は徐々に満たされていきます。笑顔が増えたり、言葉遣いが優しくなったり、さまざまな変化が起きるのは、不思議なことではありません。
人とのつながりのなかで、一人の人間として認められ、尊重され、共感や思いやり、信頼を得られることこそ、グループ回想法の醍醐味なのです。
監修/梅本充子
日本福祉大学看護学部看護学科准教授。2002年より回想法にかかわり、イギリス回想法センターで3回の回想法研修を修了。グループ回想法の普及に努めている。著書に『グループ回想法実践マニュアル』(すぴか書房)など。
イラスト/藤原ヒロコ