効果を上げる回想法
ケアに生かすための回想法~その人を知る
懐かしい思い出話を語り合う時間は楽しいですが、それだけでは「回想」の域を出ません。「回想法」とは、利用者が話す昔のことを通して、介護者がその人の過去の出来事や思いの一端をうかがい知ることで、今、本当に必要とされるケアにつなげるための手段なのです。
それには、聞き手となる介護者が、参加者一人ひとりをよく理解しようとする姿勢と技術が必要です。参加者の伝えたいことや気持ちをどう受け止めて、どのように展開していくか。大切なのは発言内容が正しいかどうかではなく、その人の思いに共感し、支持的にかかわろうとするコミュニケーション力なのです。
そうしたかかわりのなかで、自分の思いをわかってもらえたという利用者の安心感や満足感が心身の安定につながり、表情が豊かになったり、日常行動ができるようになったりするなどの効果も現れてきます。さらに回数を重ねれば、利用者への理解が深まってケアの質が上がり、結果として介護者自身の成長につながることも少なくありません。
監修/梅本充子
日本福祉大学看護学部看護学科准教授。2002年より回想法にかかわり、イギリス回想法センターで3回の回想法研修を修了。グループ回想法の普及に努めている。著書に『グループ回想法実践マニュアル』(すぴか書房)など。
イラスト/藤原ヒロコ