日常生活の質を高める認知症ケア
「自分だったらどうか」の視点を持つ
「自分だったらどうか」と立場を置き換えて考えてみる
アクティビティ・ケアの視点から、BPSDへの対応を考える際は、「その人が心地よく過ごせる当たり前の生活にするには、どうしたらいいか」という視点を持つことが必要です。そして、この視点に、もう1つ加えてほしいのが、「自分だったらどうだろうか」と、利用者の置かれた状況を自分に置き換えて考える視点です。
例えば、認知症の人は記憶障害があるため、いろいろなことを忘れてしまいます。そのため、何度も同じことを聞かれる介護者は、対応に苦慮しがちですが、健康な人でも大切なことを忘れることはあります。思い出せないと不安な気持ちになりますが、これは認知症の人も同じです。
認知症の人の状況を自分に置き換え、気持ちを想像することで、その人に寄り添う姿勢が深まります。そのような介護者の姿勢によって、利用者が安心し、気持ちが安定すると、BPSDが軽減され、起きる頻度も少なくなっていきます。
認知症の人が感じている不安や心細さを想像し、“自分に置き換えて”対応しましょう。
例)帰宅願望のある利用者の場合
“自分に置き換える”視点があると……
利用者の不安がわかるので、穏やかに対応できる
“自分に置き換える”視点がないと……
利用者の気持ちを理解できず、対応に困ってしまう
本誌では、「自分だったら」の視点で考えるBPSDへの対応のポイントをケース別に詳しく解説しています。
医療法人大橋会 介護老人保健施設みがわ看護師。デイサービスセンターの管理者として、長く認知症ケアに携わりながら、介護支援専門員、認知症ケア上級専門士、アクティビティディレクター、キャラバンメイトの資格を取得。認知症の人へのアプローチの仕方などをテーマに研修講師として幅広く活動。
文/森麻子
イラスト/中村知史