日常生活の質を高める認知症ケア
アクティビティ・ケアの視点を取り入れよう
利用者の“当たり前の生活”に近づくために、できることを考えましょう
「アクティビティ・ケア」というと、「体操や歌、制作などのレクリエーションを通じて、楽しみながら身体機能の向上を目指すためのケア」というイメージを持つ人が多いでしょう。もちろん、そういった一面もありますが、「利用者の日常生活の活性化を図り、利用者が健康だった時の日常と非日常を提供していく」というのがアクティビティ・ケアの本来の考え方です。
私たちの生活は、食事や入浴などの日常と、旅行や娯楽などの非日常のくり返しから成り立ちますが、1日の大半を施設で過ごす認知症の人は、日常と非日常からなる“当たり前の生活”が失われがちです。アクティビティ・ケアは、「利用者が施設で過ごす時間を、認知症になる前の“当たり前の生活”に少しでも近づけ、生き生きと楽しみながら生活できるようにするための援助」ととらえるとよいでしょう。“当たり前の生活”が、行動・心理症状(BPSD)の軽減につながることもあります。
とはいえ、利用者の日常は1人ひとり違ううえ、同じ利用者でも、季節やその日の体調、気分で日々の生活は変わります。介護者は、利用者にとっての“当たり前の生活”が何かを探り、「どうしたらその生活に近づけるか」という視点を持つことが必要です。そのため、アクティビティ・ケアを行うには、その人の生活歴や生活環境、生活習慣はもちろん、その日の体調や気分を把握することも大切です。
本誌では、アクティビティ・ケアを行うためのアセスメントやポイントを詳しく紹介しています。
医療法人大橋会 介護老人保健施設みがわ看護師。デイサービスセンターの管理者として、長く認知症ケアに携わりながら、介護支援専門員、認知症ケア上級専門士、アクティビティディレクター、キャラバンメイトの資格を取得。認知症の人へのアプローチの仕方などをテーマに研修講師として幅広く活動。
文/森麻子
イラスト/中村知史