もう一度見直そう 感染予防対策
クラスターの発生を防ぐために必要なことは?
ウイルスを”拡げない”ために “効果が実証された”対策を徹底
新型コロナウイルスは、感染拡大・縮小をくり返しており、完全な収束は今のところ見通せません。感染症専門医として多くの介護施設に実際に赴き、対策の指導を行ってきましたが、感染力の強大なオミクロン株の前では「これさえすればクラスターは発生しない」といえないのが実情です。
現在、もっとも効果的で確実な対策は、ワクチン接種。利用者や介護者の重症化予防に期待できます。利用者も介護者もできるだけ多くの人が接種することが介護現場では重要です。
そのうえで、感染経路に合わせた効果的な対策が求められます。その際、大切なのが、ウイルスを「施設内に入れない」ことではなく、「施設内で拡げない」ということ。ウイルスを「絶対に入れない」という姿勢だと、実際にウイルスが入ってしまった時の対策がおろそかになり、結果的にクラスターが発生してしまうことになりかねません。ウイルスが入ってくることを想定して、しっかりとした対策を講じることこそ、合理的かつ効果的な感染予防対策といえます。
もう1つ、大切なのは、効果が実証された対策は徹底して行い、効果の低い、あるいは疑わしい対策はやめることです。不要な消毒などが減ることで、現場の負担が減り、継続もしやすくなります。この2つをポイントに、感染予防対策全体を見直してみましょう。
本誌では、介護現場の感染予防対策の見直しポイントと徹底したいポイントを、場面別に詳しく紹介しています。
1997年、大分医科大学卒業。福岡県COVID-19調整本部所属。NPO法人KRICT(北九州地域感染制御ティーム)理事として、介護施設向けの研修や現場の感染予防対策を指導している。特に新型コロナウイルス感染予防対策では、高齢者施設のクラスター発生予防対策に関して、先進的かつきわめて実践的な取り組みを行っている。
文/松崎千佐登
イラスト/さいとうかこみ