難聴と認知症のかかわり
利⽤者のその症状、もしかして難聴︖
補聴器の使用で、認知能力の衰えを軽減できる
「年だからしかたない」と聞こえの悪さをあきらめ、放置する人も多いですが、聞こえの悪い状態が長ければ、それだけ脳への聴覚刺激が減ることになるので、認知症のリスクも高くなります。
もともと聞こえの悪さは本人が自覚しにくいものですが、既に認知症の症状が見られるようになった高齢者の場合、自分から聞こえの悪さを訴えることはさらに少なくなります。家族や介護者が、少しでも「もしかしてきちんと聞こえていないのでは?」と思うことがあれば、医療機関の受診を勧めるなど、早期に適切な介入をすることが大切です。
利用者のその症状、もしかして難聴が原因!?
「話しかけても反応がない」「会話がかみ合わない」など、利用者とコミュニケーションがうまくいかないのは認知症のせいだと思っていませんか? 実は、難聴で声が聞こえていないだけだった、というケースもあります。適切な対応で聞こえを改善することでケアがスムーズになったり、認知症の進行をゆるやかにすることにつながります。
話の流れに合わない返事をすることがある
難聴の人は、言葉の理解はできても、聞こえが悪いために聞き違いをしていたり、聞き直すのがいやで、わかったふりをして話をしたりすることもあります。
話しかけても、何を言っているのかわからない表情をする
認知機能の低下で言葉の理解が難しくなっていると思いがちですが、大きな声で話しかければ理解できる場合は難聴かもしれません。
「○○さん」と声をかけてからケアをしているのに、「いきなり触った」と言って怒る
声をかけたうえでケアをしているのに、驚いて怒り出すのは、認知症のBPSD(行動・心理症状)ではなく、呼びかけの声が聞こえていないだけかもしれません。
本誌では、利⽤者が「もしかして難聴かも︖」と感じた時に介護者が⾏うべき2つのポイントも紹介しています。
慶應医師会会⻑。専⾨は⽿科学、聴覚医学、頭蓋底外科など。慶應義塾⼤学医学部卒業後、慶應義塾⼤学医学部⽿⿐咽喉科助⼿、ミシガン⼤学クレスギ聴覚研究所研究員等を経て現職。『ゼロから始める補聴器診療』(中外医学社)、『「よく聞こえない」ときの⽿の本2020年版』(朝⽇新聞出版)など多くの書籍監修に携わる。
⽂/森 ⿇⼦ イラスト/⼩野寺美恵