独自の音楽アクティビティのデイ
太鼓による「心身の活性化」と「身体機能向上」効果【3】
自立支援につながるハード面を工夫協力し合って行う家事活動も機能訓練に
「寝ること以外のすべての行為が、自立支援につながるアクティビティ」。こうした基本方針に基づき、「デイサービス ルーチェ」では、多くの家事をアクティビティととらえて利用者に依頼しています。「危険がないように配慮したうえで、その利用者さんができる家事をお願いしています」と山口さん。
たとえば、デイで使うタオルなどの洗濯物を干す、乾いた洗濯物をたたむ、食事の配膳・下膳、洗ったあとの食器ふきや片づけなどが、無理なくできるように工夫がこらされています。いすに座ったままでも洗濯物が干せるように低い物干しツールを用意したり、食器棚にも片づける食器の写真を貼っておいたりという具合です。
その結果、ほぼ全員が何らかの作業を担当することに。ときには料理レクとして、天ぷらやちらし寿司、おやつなどをみんなで手作りすることもあります。自家製のぬか漬けも、利用者がかき混ぜる作業を担当しているのです。
「デイというより共同生活に近い感覚ですね。ともに過ごすなかで、利用者さん一人ひとりに、役割意識や充実感、達成感を持っていただけますし、日常生活に必要な機能の維持・向上も図れます」(山口さん)
加えて、朝と昼食後、必ず全員で書くのが、日記。脳トレの一環として行うもので、まず朝のバイタルチェック後に自宅でとった朝食を思い出して書き、午後にはデイでとった昼食の内容などを書きます。
なかなか思い出せない利用者に、「お昼はハンバーグとサラダでしたよね。あとは何がありました?」と助け船を出す仲間の姿も見られました。
日記用のノートや筆記用具は、各自の名前を書いた道具箱に入れてあります。リビングの棚に並べてあり、必要に応じて各自が出し入れするシステムです。
それぞれの道具箱には、認知機能の状況に応じた脳トレのプリントや、利用者が自ら持参した脳トレの本などを入れています。
「音楽アクティビティや家事活動に加えて、こうした脳トレもすることで、多角的に脳を刺激するようにしています」(山口さん)
ほかにも、「デイサービス ルーチェ」では、季節ごとの景色を楽しむ散歩や社会見学など、外に出る機会を多く設けています。
幅広い独自のプログラムが功を奏してか、表情豊かに会話を楽しんでいた利用者たち。ギュッと多彩なプログラムが盛り込まれた1日を、それぞれが本当にイキイキと過ごされていました。
「施設で行うすべての活動はアクティビティ」との考え方のもと運営。そのため、一般の住宅をあえてバリアフリーにせずに使用する。畑作りに協力してもらうなど、近隣住民との信頼関係も厚い。
文/松崎千佐登 写真/磯﨑威志(Focus & Graph Studio)