最前線インタビュー
好きなレクを選べる大規模デイサービスを展開【2】
――自立支援にも力を注いでいるとか。
靴は自分で靴箱に入れて鍵をしめるなど、できることはしていただいています。利用者様が新しく入った方に「靴はここに入れるのよ」などと、利用法を教えてくれるようにもなりました。自主性を尊重してお世話をしすぎないサービスは、機能維持はもちろん、利用者様同士のコミュニケーションにもつながっています。
家での自立した暮らしや社会性の復活をサポートする仕組みも構築しています。例えば「鮭のマヨネーズ焼き」など、おかずをメインとした料理教室。一人分ずつ材料を小分けして自分の分を作ってもらい、持参した食品保存容器に入れて持ち帰り、自宅での夕食に。「自分で作った料理はおいしい」「家でも栄養バランスのよい食事ができるようになった」と喜びの声をいただいています。また、施設内通貨ハニーに判を押したり、その通貨入れにひもを通したりする作業でハニーを得る“アルバイトメニュー”もあります。
新しい取り組みで介護業界を活性化したい
――デイの利用者の反応は?
介護施設というより、ジムやサロンのようなデイは利用者様から大好評です。女性のみなさんはお化粧して来館するんですよ。「楽しい。もっと通いたい」という男性もいます。ただし、私たちは「大規模デイでなければ」と思っているわけではありません。アットホームな小規模デイも必要ですし、当社も運営しています。一方「みんなで同じことをするのは苦手」という方もいらっしゃいます。メニューを自分で選ぶ大規模デイによって利用者様の選択肢を広げられたと思っています。
――今後は、どのような取り組みを?
利用者様が過ごし方を選べるデイ、利用者様から選ばれるデイを目指して工夫を重ねていきたいです。
また、当社は研修にも力を入れており、そのひとつは北水会グループが運営する福祉専門学校でのビギナーズ研修です。この研修にはトランスファー(移乗介助)など介護技術だけでなく、特殊眼鏡などをつけて高齢者体験をしながらカルチャー作品を創るカリキュラムもあります。高齢の方の大変さがわかり、それは利用者様の理解につながるはず。
ビギナーズ研修には他社の方も参加できるコースもあります。多くの人に参加してほしいし、研修を通して会社や職務の垣根を越えたコミュニケーションを深めてほしいです。さらに今後は、デイの送迎車両の空き時間を活用して地域の方の買い物などを支援する事業も考えていきたい。さまざまな取り組みで、介護業界の活性化の一翼を担えるとうれしいです。
1979年、茨城県水戸市で北水会病院を開設。84年、北水会グループの一員として株式会社ケアレジデンスを設立。介護付有料老人ホームやデイサービスなどを展開する。2019年4月現在、介護付有料老人ホーム4か所、デイサービス13か所、居宅介護支援事業所4か所などを展開。北水会グループとしては病院・クリニック、保育園・学童保育、介護用品レンタル・販売、フィットネスクラブ、レストランなど多彩な事業を展開。北水会グループ総従業員数2431名(2019年4月現在)
北水会グループ 株式会社ケアレジデンス ケアレジデンス東京アネックス施設長 萩野 裕道氏
2002年に北水会グループに入社。サービス付き高齢者向け住宅の管理者などを経て、2012年に大規模デイサービス「コミュニティガーデン百合が丘」の立ち上げから携わり、施設長に。その後「コミュニティガーデンとうかい」施設長。現在、介護付有料老人ホーム「ケアレジデンス東京アネックス」施設長と大規模デイ「コミュニティガーデン東京アネックス」管理者を兼任。社会福祉士・介護支援専門員。
取材・文/佐藤ゆかり