継続的な世代間交流で
空き教室を活用したデイで地域コミュニティの拠点に【3】
教室の広々とした空間を活かしつつ、居心地のよさが感じられるよう、室内を整備
デイの室内は、もともと教室なので、十分な広さがあり、壁も大きく、レクや制作を行いやすい環境です。「半面、そのままでは使いづらいところもあり、工夫して改築を行いました」と鳥羽さん。
例えば、サッシの窓や金属製のドアは、そのままでは味気ない印象になるので、内側に障子をあつらえたり、木製のドアに替えたりして温かみのある内装に。一画には和室も作りました。
「学校の建物は冷えるので、利用者さまの体を冷やさないよう、全体に床暖房を入れてあります」(鳥羽さん)引き戸の形態はそのまま活かして教室らしさを残すなど、学校の味わいは保ちながら改築したそうです。
利用者が集うメインの部屋には、直径2mほどの大きな丸テーブルが3つあります。思い思いに制作をしたり、お茶を飲みながら新聞を読んだり、子どもたちの訪問時にはグループに分かれてゲームをしたりと、このテーブルが大活躍。部屋の奥にはソファが並んでいて、そこでくつろいでいる人も。空き教室ならではの広いスペースがあるからこそ、可能なレイアウトです。
もとは黒板があった壁には、毎月制作して入れ替えるという季節の貼り絵が飾られていました。
「ただ、不便な部分もあります。廊下の先にトイレがあるので動線が長いのです。しかし、逆にそれをリハビリに活用しています」と鳥羽さん。トイレに行くたびに長い廊下を歩くことが、歩行機能の維持や改善に役立っているというのです。
「私どもは、ほかにもデイサービスを運営していますが、受け入れ対象は同じなのに、なぜかこのデイの要介護度が1番低いのです。長い廊下を歩くことが関係しているのかもしれません」(森下さん)
この日の午後、約1時間の交流会を終えた子どもたちは、利用者とスタッフの拍手に見送られて退席。利用者たちは、「ありがとう」「楽しかった」「またね」と、 満面の笑みで子どもたちと言葉を交わしていました。
小学校の教室という場で行われる、デイを介した世代間交流。それは空間の有効利用だけでなく、地域の長期的な活性化や住みやすさにつながっているようです。
文/松崎千佐登 写真/内藤貞保