うまくいかないのはなぜ?
得意なレクを嫌がる認知症利用者への対応【前編】
Q 得意だったレクリエーションを嫌がるようになった利用者に、どう対応したらいいでしょうか?
制作レクが好きで意欲的に取り組んでいたAさんが、最近は「やりたくない」と言います。「できるところまででいいですよ」と誘ってなんとか参加してもらっても、すぐに手が止まってしまい……。どうしてなのでしょう。
A 失行・失認があると、手や足が思いどおりに動かないことがあります。作業を変えるなど、できることを探りながらアプローチ法を考えていきましょう。
Aさんが制作レクをやりたがらないのは、認知症の中核症状である失行や失認によって「できなくなっている」可能性があります。まずは失行や失認の特性を理解して、今のAさんができそうなことを探してみましょう。
対応のポイント
「失行」とは、運動機能には問題がないのに、これまで行ってきた動作や物の操作ができなくなることです。一方、「失認」は、自分の体の状態、体と物の位置関係などをうまく認識できなくなる状態です。これらにより、昨日までできていたことが今日はできなくなってしまう場合があるため、「やりたくない」のではなく、「できない」のかもしれないと考えてみることも必要です。混乱や落ち込み、怒りなどがそのサインとなるので、観察してみましょう。
折り紙を半分に折るという簡単なことでも、角と角、線と線が合わないなど、空間認知能力が低下した失認の人にとってはとても難しいもの。この場合、折り紙をちぎるなど位置関係がわからなくてもできる作業に切り替えてみましょう。また、失行・失認のある人でも、洗濯物をたたむ、テーブルを拭くなど、手続き記憶(繰り返し行うことで身についている技術や記憶)に基づく日常的な動作はできることが少なくありません。これらをお願いしてみるのもいいでしょう。