うまくいかないのはなぜ?
何度もトイレに行きたがる人への声かけ[認知症ケア]
Q 何度もトイレに行きたがる人にはどうしたらいい?
Aさんは、職員を目にするたびに「トイレに行きたい」と訴えます。トイレには少し前に行ったばかりで、本当に排泄したいようには思えないこともあります。あまりにも頻繁で、業務が滞り気味で困っています。
A 失敗体験や、相手にしてほしい気持ちから、トイレを訴えていることがあります。
トイレに行っても実際には排尿や排便がない場合は、ほかに理由があると考えられます。過去にトイレでの失敗体験があり不安になっている、寂しさから介護者を求めているなど、その理由を考えるところから始めましょう。
対応のポイント
この場合、誰かにそばにいてほしいと思って、介護者の関心を引こうとしているケースがあります。その理由は「不安」「寂しさ」「所在なさ」などさまざまですが、まずは介護者が「あなたを見ていますよ」というサインを送ることが重要です。そばにいても、少し離れていても、その利用者と目を合わせ、数秒でも笑顔で見つめるようにしましょう。このアイコンタクトを続けるだけで、利用者は安心し、落ち着いてきます。それが訴えを減らすことにつながるはずです。
もちろん、何らかの疾患の可能性もありますから、その間も体調や排泄物の変化は注意して見ていく必要があります。
監修/伊東美緒
東京都健康長寿医療センター研究所研究員、看護師、保健師。介護施設や在宅での認知症ケアを研究。著書に『認知症の方の想いを探る~認知症症状を関係性から読み解く~』など。
文/高野千春 イラスト/田上千晶