ホテル最上階にあるデイ
ホテル品質のもてなしと充実した個別機能訓練【3】
日常生活動作向上の充実した運動レク
ここのもうひとつの特色は、利用者全員で行う運動レクリエーションを充実させている点です。「ホテルならではの接し方が運営のベースにありますが、日々、いちばん重要視しているのは運動の量とその質です」と管理者の井内裕子さんは話します。
その言葉通り、この施設では午前中に1時間、午後にも1時間ほど運動の時間が設けられており、それらの合間に個別の機能訓練が入るなど、1日のプログラムの中心が体を動かすことで構成されています。
取材時にも、集中して運動に取り組む利用者の姿がありました。そして、職員の声かけや関わり方でさらに、利用者のやる気が高まる様子も見られました。
この日、午前中に行ったのは、長い棒を両手で持ち、椅子に座って体を伸ばす「棒体操」。
「棒を肩幅で持って、高く掲げてください」
「息を吸いますよー」
「首筋が伸びていくのを感じながら行って」
運動の指示を簡潔に伝える、職員のこのような声かけで、利用者の集中力が途切れることはありません。全員が自分のできる限りの運動に真摯に取り組んでいました。
午後に行われたのは、中国独特の曲にのせて行う「太極拳」。ここでも、利用者のモチベーションを高める職員の工夫は健在です。
利用者の前で指導する女性職員は中国風の衣装で登場。右手を握り、広げた左手の手のひらと合わせる太極拳の独特なあいさつで、冒頭から利用者の気を引きます。その後、
「手を頭の上で組んでゆっくりと右に倒しましょう」
「息を鼻から大きく吸って、口から吐きます」
「呼吸を意識して」
など、注意するポイントをわかりやすく伝えていました。
太極拳を担当する増山さんが心がけていることは、「次にやる動きを見越した、先導するような声かけ」なのだとか。利用者がスムーズに動きやすいよう、いまやっている動きの中で、「次は〇〇をします」と導くような言葉をかけ続けることを大切にしているそうです。その成果か、数十分の間、利用者全員がひとりも止めることなく、3曲分の運動を最後まで行っていました。
この施設では他にも、衰えがちな認知機能に作用する様々なプログラムも取り揃えています。シナプソロジー(脳の活性化プログラム)やトイピアノを使用した機能訓練、犬と接することで高齢者の情動を刺激するドッグセラピーなども実施。
「脳と体の両方の機能を維持することを目的に、大人のセンスにしっかりと耐えられる内容を目指しています」と井内さんは語ります。