“理由”を探るレッスン
認知症利用者の言動の“理由”を考える
人の発言や行動には理由がある
認知症の利用者から「(自宅へ)帰りたい」と訴えがあった時、「えっ、突然どうしたんだろう?」と思ったことはありませんか?
そして、その場を収めようと気分転換をはかったり、次に同じことが起こった時にどう対応するかをチームで話し合ったりする―つまり、「突然の言動」が起きた「あと」の対処法を考えることが介護の現場ではよく見られます。
しかし、人の言動には、多くの場合、[1]何かしらきっかけとなる出来事があって、[2]それによって本人が何かを感じたり、考えたりして、[3]その結果が表情や言動として表れるというプロセスがあります。このプロセスは認知症の人も例外ではありません。「帰りたい」という言葉が発せられる「まえ」には、本人が何かを見たり、聞いたり、感じたりしていることが考えられます。
認知症の利用者の言動の理由を探るには、まず利用者が置かれていた[1]「状況」を探り、それによって利用者の内面でどのような[2]「反応・触発」が起き、その結果[3]帰りたいという「言動」に至った―このプロセスで考えると理由を探りやすくなり、適切な対処法も見つけやすくなります。「まえ」に何があったかによって、「あと」の対処法も変わってくるからです。
監修/裵鎬洙(ペ・ホス)
介護福祉士、介護支援相談員、主任介護支援専門員。認知症ケアの観点を増やし、コミュニケーションセンスを磨く研修を提供している。研修オフィス・アプロクリエイト代表、介護老人保健施設名谷すみれ苑主任相談員、コミュニケーショントレーニングネットワーク講師を務める。著書に『“理由を探る”認知症ケア―関わり方が180度変わる本』(メディカル・パブリケーションズ、2014年)がある。
イラスト/尾代ゆうこ