高齢者虐待を知る【3】
介護の現場で感じられるジレンマ
“利用者がしてほしいこと”と“介護者としてしたほうがいいと思うこと”にはギャップがある
例えば、自分で食べられるのに、かまってほしいなどの理由から自分で食べようとしないケース。食事介助をすることは、自立の機会を奪うことになり、「適切な介護の提供の放棄」に当たる恐れもあります。一方で、介助をすれば食べてくれるという現実もあるかもしれません。
さらに考えを進めてみると、「利用者がしてほしいこと」と「介護者としてしたほうがいいと思うこと」との間にもギャップを感じるケースがあるかもしれません。
風通しのよい組織風土が虐待を遠ざける
大事なのは、自身の言動を振り返り、「もしかしたら虐待かも?」と考えてみること。そして、ジレンマを感じたら、それを解消するためにどんな対応をするか、です。
この時、ジレンマを一人で抱え込んではいけません。近年では介護スタッフを集めてケア向上委員会のようなカンファレンスの機会を設ける施設も増えてきていますが、上司や同僚に相談して、よりよい方法を探ることが重要です。悩みを打ち明けることは恥ではなく、介護者として成長する糧になります。
監修/昭和大学保健医療学部看護学科老年看護学教授 小長谷百絵
千葉大学看護学部を卒業。東京医科歯科大学博士後期課程修了(看護学博士)後、現職とて要介護施設における不適切処遇などに関する研究を進める。主な著書は『在宅人工呼吸器ポケットマニュアル 暮らしと支援の実際』(共著、医歯薬出版)など。
文/河村武志・中澤仁美(ナレッジリング) イラスト/さいとうかこみ
千葉大学看護学部を卒業。東京医科歯科大学博士後期課程修了(看護学博士)後、現職とて要介護施設における不適切処遇などに関する研究を進める。主な著書は『在宅人工呼吸器ポケットマニュアル 暮らしと支援の実際』(共著、医歯薬出版)など。
文/河村武志・中澤仁美(ナレッジリング) イラスト/さいとうかこみ