うまくいかないのはなぜ?
入浴したくないという人への声かけ[認知症ケア]
Q 「お風呂に入りたくない」と言う人へどう声かけしたらいいのでしょう?
「お風呂に入りましょう」と声をかけても、Aさんはなかなか入ってくれません。聞き取れないのかと思い、大きな声で誘ってみたら、「嫌だ」と言って余計かたくなになり、動こうとしません。
A まず視線を合わせ、ジェスチャーで注意を向けることから始めましょう。
【対応のポイント】
入浴への誘導は声かけの仕方がポイント。声かけをしているつもりでも、車いすでの誘導は肩越しになり、実際は利用者に声が届いていないことも多いのです。また、急ぐあまり、声かけと動作開始が同時になってしまうと、利用者には何が起きているのかわからないまま服を脱がされ、洗われるという恐怖体験になり、「嫌な記憶」として入浴を嫌がるようになるのです。
声かけの際は、視線を合わせて相手の注意を引きつけ、ゆっくりとジェスチャーなどを交えて説明します。認知症の人は言語理解力が低下しているため、相手の理解を確かめ、安心感を与えることが必要。それがよい感情記憶に結びつきます。混乱が収まらない時には入浴をやめて、清拭などに切り換えてもいいでしょう。入浴=嫌な記憶にしないことのほうが大切です。
監修/伊東美緒
東京都健康長寿医療センター研究所研究員、看護師、保健師。介護施設や在宅での認知症ケアを研究。著書に『認知症の方の想いを探る~認知症症状を関係性から読み解く』など。
文/高野千春 イラスト/田上千晶