“理由を探る”レッスン
客観的事実から探る認知症ケア【2】
その時、本人は何と言ったのか?
客観的事実をとらえるために忘れてはならないのが、利用者本人の言葉です。心のどこかで「認知症の人の言うことは当てにならない」と考え、介護者や家族の情報・判断だけでケアを進めてしまうことはないでしょうか。しかし、本人の言葉には、その人の思いや考えが必ず表れています。
例えば、「息子はどこにいるの?」と言う人と、「そろそろ仕事に行かなくちゃ」と言う人では、同じように歩き回っていたとしても、その動機はまったく異なるはずです。
たとえ、その状況にそぐわないように見える発言であったとしても、そのように発言している思いを汲み取ることで、歩き回ることの理由を探り、ケアの質を向上させる大きな手がかりとなります。
考えられる理由の例
・トイレに行きたかった
・家族を探していた
・日課だった散歩をしていた
・食器の音がしたため、手伝おうとした
・仕事に行こうと思った
・運動不足なので、体を動かそうと思った
・足がむずむずした
・空腹だった
・水が飲みたかった
・慣れない環境で落ち着かなかった
・子どもを迎えに行こうと思った
・退屈だった
監修/裵鎬洙(ペ・ホス)
介護福祉士、介護支援相談員、主任介護支援専門員。認知症ケアの観点を増やし、コミュニケーションセンスを磨く研修を提供している。研修オフィス・アプロクリエイト代表、介護老人保健施設名谷すみれ苑主任相談員、コミュニケーショントレーニングネットワーク講師を務める。著書に『“理由を探る”認知症ケア―関わり方が180度変わる本』(メディカル・パブリケーションズ、2014年)がある。
イラスト/尾代ゆうこ