「思い」があるだけでは伝わらない
接遇のポイント「利用者に寄り添う気持ちをどう伝えるか」
一般的には、もてなすことを意味する「接遇」。介護の現場でも利用者の満足度を上げるには、挨拶や丁寧な言葉遣い、立ち居振る舞いといったマナーの習得は基本です。その上で、求められるのが、状況や相手の気持ちに寄り添う、柔軟性のあるコミュニケーション力です。
実際の現場で、介護者は聞き役に回る場面も多くあります。利用者が言いたいことは何か、まずは一生懸命聞くことが大切です。伝えたい、わかりたいという双方の熱意がなければ、コミュニケーションは成立しません。そして、お互いの思いを了解し、共有するには、伝えたという事実ではなく、伝わったという実感が必要なのです。
利用者の話を聞いた介護者が、例えば「今は辛い状況なんだな、苦しいんだな」と感じたときに、どう言葉で表現すればよいでしょうか? まずは、「お辛いんですね。何が辛いのか、よかったらお話しいただけませんか」という問いかけをし、利用者の気持ちを確認することが大事です。利用者がどういう気持ちでいるのか、状況に応じて、かける言葉は変わってきます。そうした言葉の選び方や伝え方しだいで、利用者の心は打ち解けたり、閉じたりします。
コミュニケーションとは、単なるメッセージのやり取りではなく、相手の行動や思考、感情に影響を及ぼすもの。よかれと思って発した言葉が、逆効果になってしまったりするのは、そのためです。
監修/大谷佳子
昭和大学保健医療学部兼任講師。介護の場におけるコミュニケーションについて研究。著書に『基礎から学ぶ介護シリーズ 利用者とうまくかかわるコミュニケーションの基本』(共著・中央法規)など多数。
昭和大学保健医療学部兼任講師。介護の場におけるコミュニケーションについて研究。著書に『基礎から学ぶ介護シリーズ 利用者とうまくかかわるコミュニケーションの基本』(共著・中央法規)など多数。