事例で学ぶ認知症ケア
紙パンツを使わず入浴も嫌がる利用者への対応【2】
スタッフは、Sさんの行動や生活歴から介護者を近づけようとしない理由を考え、こんな対応をしてみました。
倹約し、努力してきた生活を尊重して、下着をほかの利用者に見られないよう入浴の順番を最後にする
着衣のなかでも特に下着の傷みがひどかったので、入浴時に一人になろうとする理由がここにあるのではと考えました。そこで、改めて、Sさんの生活歴を見直したところ、本人を尊重する視点に欠けていたことに気づきました。ほかの人と一緒にならないよう入浴順を最後にし、なるべく同じスタッフが介助を担当して羞恥心を感じさせないよう配慮したところ、入浴できるようになりました。
看護師として頑張ってきたというプライドに配慮し、下着を「国から頑張った方へのプレゼント」として渡す
看護師として頑張ってきたというプライドから、貧しくても人に頼りたくないと思っているのではと考えました。そこで、Sさんに施設の下着を「国から頑張った方へのプレゼントです」と渡し、 頑張りが認められていることを伝えました。このことをきっかけにSさんの態度が軟化し、ケアを受け入れるようになりました。
本誌では利用者と一緒にいる時間から“その人” を知る会話のポイントも紹介しています。
監修/服部安子
社会福祉法人浴風会本部浴風会ケアスクール校長、社会福祉士、精神保健福祉士、介護支援専門員。障害者福祉の地域実践を経て、老人福祉施設の立ち上げ・運営に30年余携わる。著書に『認知症ケアの真髄』がある。
文/高野千春 イラスト/ホンマヨウヘイ
社会福祉法人浴風会本部浴風会ケアスクール校長、社会福祉士、精神保健福祉士、介護支援専門員。障害者福祉の地域実践を経て、老人福祉施設の立ち上げ・運営に30年余携わる。著書に『認知症ケアの真髄』がある。
文/高野千春 イラスト/ホンマヨウヘイ