五感をフル活用!
認知症ケアとしての園芸療法の効果
五感を刺激して感覚をひらく
園芸療法とは、植物そのものや植物のある環境、植物を育てる園芸作業などを、障害者や高齢者などの心身のリハビリテーションに活用する方法で、認知症の人への効果も期待できます。植物の成長を楽しむことで心が動き、花を見て香りを嗅ぐことで「視覚」や「嗅覚」、触れることで「触覚」が刺激されます。また、野菜を収穫して食べることで食欲が増進されるなど、認知症で閉ざされがちな五感が活性化され、自然と感覚や心をひらくことができるのです。
さらに、なじみのある植物の種まき、水やり、収穫に積極的にかかわることで、認知症にともなう見当識障害で失われた季節感を呼び覚ます効果も見込まれます。
認知症のために、植えたこと自体を本人が忘れても、その都度、「その時」の植物の成長を楽しめる点も認知症ケアとして効果的です。植物は育てる人の心身機能に関係なく、誰もが等しくふれあえるからです。
そして、なにより大切なのは、植物の成長を介護者も共に喜ぶこと。利用者と共に日常的に植物を見て、手入れし、ふれあうことで、施設で過ごす利用者の時間も、「介助する」「される」関係ではなく、共感をし、共に生きる時間になるのです。
植物にかかわることで「自己有用感」が生まれる
認知症の人も、役に立ちたい、何かしたいという思いがあります。その点、園芸はわかりやすくかかわりやすい作業が多く、「水やりや草むしりをしてくださいませんか」「収穫しましょう」など、日常的にさまざまな作業をお願いすることが可能です。そこから「自己有用感」(自分が役に立ち、必要とされている感覚)や役割、責任感が生み出されていくのです。