入浴の楽しさをもう一度
銭湯を利用したデイ【1】脱衣所で音楽療法
「デイサービスセンター・湯~亀」は、営業前の銭湯を利用した“銭湯デイ”。広々とした湯船にゆったり浸かり、昼食を食べたあとに、男女の脱衣所をつなげた広間で様々なレクを行っています。
この日は週3回行われている音楽レク「歌声喫茶湯~亀」の日。約30分間のプログラムは、音楽療法士の和田京子さんが参加者のリクエストや個性を踏まえて組み立てたもの。誰もが知っている昭和歌謡に楽器やリズム運動、クイズを取り入れ、認知症があっても楽しめるよう工夫されています。
「高齢者にはお風呂と歌が大好きな人が多い。湯あがりに脱衣所で歌えたら気持ちがいいだろうなと思い、音楽療法を取り入れることにしました。懐かしい歌をうたうことで記憶や感情が蘇ったり、手足の運動や脳トレになったりと音楽療法には様々な効果がありますが、とにかくみなさんすごく楽しそうなんです」と語るのは、管理者の新井重雄さん。
「最初は無表情だった方も、終わる頃には気持ちがほぐれ、やわらかな笑顔を見せてくれます。無理に歌わなくても、うまく演奏できなくても、楽しい気分や美しい音色を共有することで感情が揺さぶられるのです」(和田さん)。
銭湯のもともとのつくりや雰囲気を生かすことを重視しているため、デイサービス開業にあたり大掛かりな改修はしていないそうです。
デイサービスセンター・湯~亀/東京都・品川区
文/鎌田幸世 写真/柏原真己