世界遺産「熊野古道（くまのこどう）」で知られる和歌山県田辺（たなべ）市で、斬新な介護人材確保策がスタートしようとしています。それは福祉定住促進モデル事業といい、高齢化の著しい中山間地域の一つ、同市内本宮町で訪問介護員が不足しているのを受けて、全国各地から人材を募集するという取り組みです。

特徴的なのは、全国規模での募集をするだけでなく、その本宮町に5年間定住することを条件として、介護職員初任者研修（旧・ホームヘルパー2級研修相当）の費用と研修の間の生計費の助成を行うというしくみです。つまり、介護人材の確保とともにU・Iターン希望者の定住促進という2つの事業をミックスさせた施策となります。

同市の平成27年度予算案では、新規事業として約222万円が計上されました。これにより、初年度は研修費、生活費をそれぞれ5名を上限として助成することが予定されています。1人あたりの研修費用は15万5千円（受講料全額）、生計費は1か月あたり11万2千円2か月の研修期間で計22万4千円）となります。ただし、条件となっている5年間の定住が果たされない場合は、全額返還しなければなりません。

研修終了後は、本宮町内の介護事業所で正規職員として雇用されます（農業等との兼業を希望する場合は、短時間非正規雇用も可能）。住居確保のために空家も紹介してくれます。U・Iターンによる移住者誘致のためのイベントや広報誌などで告知を行い、東京と大阪で面接が行われます。

本宮町の高齢化率は現在45%に達していますが、半面、支え手となる介護人材の不足は深刻です。こうした傾向は、全国各地の中山間地域では共通の課題となっています。その意味で、今回の田辺市の取り組みは大きな試金石の一つとなりそうです。