高齢者と障がい者の共生型デイ
ランチを調理する“働くリハビリ” で地域の一員に【1】
生活リハビリ、文化活動、労働、地域交流……。それらを一体化させた独自の運営を行うのが、「カルチャースクール亀吉」。「世話をされるより社会の役に立ちたい」と願う利用者の充実した時間と笑顔が、そこにはありました。
デイサービスの機能訓練としての調理。地域の人に食べてもらうことがやりがいに
木を基調にした温かい雰囲気のレストラン「かめキッチン」。十数卓が並ぶフロアの奥にある厨房で、デイサービス「カルチャースクール亀吉」の利用者たちが事前に自分たちで決めたメニューを手際よく作っていきます。
一緒に作るのは、同じ法人の就労支援事業所の仲間や地域のボランティア。できあがった料理は、レストランのランチバイキングとして提供されます。最近は「料理リハビリ」を行うデイが増えていますが、その料理をレストランで一般の方に提供することは、全国でも珍しく、画期的な試みです。
「料理リハビリ自体は10年前から行っていました」と言うのは、かめキッチンの母体であるNPO法人シニアライフセラピー研究所理事長の鈴木しげさん。
「今でこそ一般的に行われている料理リハビリですが、当時は調整にかなり苦労しました。それでも導入したのは「利用者さんの『やりたいこと』だったからです」(鈴木さん)。
デイサービスらしくない「カルチャースクール」という名前が示すとおり、ここはやりたい遊びや勉強や労働などを楽しんでもらうのがコンセプト。なかでも、利用者の希望が多かったのが料理でした。
当初は、自分たちが調理したものは事業所内で食べるだけでしたが、昨年6月、レストランの開設をきっかけに一般客にも提供。野菜中心で家庭的な味つけのメニューは「安くておいしい」と家族連れにも好評です。また、地域の人に食べてもらうようになったことで、利用者の「役割意識」がより高まりました。調理をする利用者は、有償ボランティアとして対価を受け取るシステムにしたことも充実感につながっています。
利用者が併設のレストラン「かめキッチン」の厨房でランチメニューを調理。隣の障害者就労支援事
業所で作ったパンもレストランで提供する。高齢者と障害者が共に働く共生型のデイ。
文/松崎千佐登 写真/中村年孝